2ペンスの希望

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映画から学ぶということ

岡本喜八監督の対談集「しどろもどろ」を読んでいたら、澤井信一郎さんがこんな発言をしていた。
学ぶということについて言うと、映画というのは画面からでは学べませんよね。画面から学んだつもりでも、おそらく何も学んでいないのではないかと思います。これは創る側のことなのですが、現場について映画に対する態度、脚本に対する態度、そういうことを学ぶんだと思います。たとえば、観る側はいろんな選択の中から描かれた一つしか観られないですよね。しかし、映画を作っている時には十くらいの考え方があってこのほうがいいんじゃないか、あのほうがいいんじゃないか、と悩みますね。現場にいてそこを観ているほうが、映画の勉強にはなります。その画面には映らなかった部分というのは、画面を観ているだけでは想像できないのですから
                 【2012年9月10日刊 ちくま文庫「しどろもどろ」277頁】
澤井さんといえば、以前にもこんな言葉を紹介したことがある。「映画監督になる前に、まず優秀な助監督になるべきだ。なのに映画の教育機関はいきなり監督になれるという幻想を与える」頑迷な現場主義者と嗤うかもしれないが、正論だと思う。けど同時に、「映画の現場」がいまどれだけあるのかを考えると暗澹とした気分にも陥る。