2ペンスの希望

映画言論活動中です

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「鑑賞するとは自分で作品を作り直すこと」

今日もまた、伊藤亜沙さんの本『目の見えない人は世界をどう見ているのか』【2015年4月 光文社新書】から。 伊藤さんは大学で現代アートを教える先生だ。 「鑑賞とは作品を味わい解釈することですが、鑑賞をさまたげる根強い誤解に、「解釈には正解がある」…

自立とは‥‥

「自立とは依存先を増やすことである。」脳性麻痺で電動車椅子生活を送る小児科医・熊谷晋一郎さんの言葉だ。 それを受けて「身体性を大切にする」美学研究者・伊藤亜紗さんはこう書いている。 「健常者だって本当はいろんなものに依存して生きています。健…

タテからヨコへ

世の中とかく上下をつけたがる。格付けランキング、マウンティング、スクールカースト、ピラミッド、ヒエラルキー、‥‥、右も左も縦社会。スポーツ世界はさらに歴然だ。一軍二軍三軍、J1 J2 J3、MLB AAA(tripleA) AA(doubleA) A+(High A) A(Low A) ROK、‥‥。…

分身ロボット

「OriHime」という分身ロボットのことを知った。 AIロボットのPepper君とは全く違う。aiboなどのロボットペットとも違う。開発したオリィ研究所のHPにはこうある。 「OriHimeは人工知能ではありません。OriHimeはあなたの分身になり、離れていても会いたい人…

je ne sais quoi

「もともと生物学者を目指していたが、大学3年次に文転し」「身体性を大切にしている」美学研究者・伊藤亜紗さんの発言にこんなのがある。(『目の見えない人は世界をどう見ているのか』【2015年4月 光文社新書】) 「フランス語に、「ジュヌセクワ( je ne…

寄席か?(寄席化? 寄席可?)  

昨日「配信」についての雑感を書いた。なかに西川美和さんの『スクリーンが待っている』こんな一節を引いた。 「新しくやって来る時代がまた終わりを迎えるころ、映画館はまだ生き残っているのだろうか。」 今日は、百年後の映画館がどうなっているのか、夢…

配信(『スクリーンが待っている』③)

臆病でケチなので、動画配信サービスのサブスク(リプション)には手を出しかねている。「動画」や「コンテンツ」という言葉遣いにも違和感がぬぐえずにきた。 名だたる世界の映画祭も揺れているようだ。劇場公開されない映画のコンペティション参加を認めない…

俳優部(『スクリーンが待っている』②)

昨日の続き 西川美和『スクリーンが待っている』から。 「私は、古い撮影所由来の「俳優部」という言葉を久しぶりに思い出した。それはスター俳優含めすべての役者が「演技」を預かる一部署として、撮影部、照明部、美術部、録音部、衣装部などと同格のプロ…

お天道さま(『スクリーンが待っている』①)

西川美和さんの映画は何本か見ている。好きなのもあれば、正直 ん?と思うのもある。(大きな声では言えないが、師匠より打率は高いと思ってる、ココだけの話。)それでもイマドキしんどい映画づくりを選ぶなんてどんくさくも奇特なことで‥と半分は同情と甘…

快音(『ひび割れた日常』から)

『ひび割れた日常』は、2020年5月から10月にかけて 人類学者と小説家と変な美学者の三人が綴ったリレーエッセイ本だ。【2020年12月 亜紀書房 刊】 コロナ関連本はそれなりに読んだが、刺激的だった一冊。コロナ云々を超えた視野を感じた。 伊藤亜紗さんの「…

movie

ここ数日、幾つか断片シーンを並べてみた。見直してみると、あらためて映画が会話や言葉・台詞じゃなく「アクション=動き」であることを再認識した。movie、motion picture という言葉の深い意味を感じる。その昔「活動大写真」と呼ばれたこともむべなるか…

今は昔:A.マニャ―二

アンナ・マニャ―二。強い女 ならぬ 女は強し。 www.youtube.com もう一本。 www.youtube.com

今は昔:G.ローランズ

ジーナ・ローランズ。 ジョン・カサヴェテスの相棒 というより、「元祖 男前」 www.youtube.com

今は昔:P.ニール

お気に入りは まだまだいる。パトリシア・ニール。 www.youtube.com

今は昔:P.ローリー

お気に入りの女優さんは何人もいる。どの映画でもというファンではない。映画の役どころとの兼ね合いが大きい。パイパー・ローリー。さて、何の映画のどのシーン? www.youtube.com

今は昔:F.アルヌール

数日前に書いた文藝春秋編『大アンケートによる日本映画ベスト150』には姉妹編『大アンケートによる洋画ベスト150』【1989年7月 文春文庫ビジュアル版】もある。裏表紙を挙げる。 〈カバー裏〉フィルムでMをデザインしたのは、90年の長きにわたって人…

今は昔:戎橋劇場

昭和の時代、大阪には、キタに「大毎地下劇場」があり、ミナミには「戎橋劇場」があった。ともに何年も通った劇場だが、大阪ディープサウス育ちとしては、キタよりミナミ「戎橋劇場」が御贔屓だった。 戎橋北東詰キリン会館の4/5/6階 吹き抜け三フロアに …

ぼーっと見る tangible

TV桟敷で大相撲中継を見ていたら、審判委員を永く務めた峰崎親方(現役時代:三杉磯)が解説でこんな話をしていた。 「土俵を注視しすぎると、見えなくなることがあるんですよね。勝負審判を務める時にはぼーっと見るように心がけていました。その方が見誤ら…

地獄の正体

昨日の続き。 文藝春秋編『大アンケートによる日本映画ベスト150』【1989年6月 文春文庫ビジュアル版】「たったひとりで、ベスト100選出に挑戦する!」と題した故井上ひさしの顛末。 目次にはこうある。「自他共に許す映画マニアが、艱難辛苦の果てに…

ダメとは言わないが

ネットを叩くと、「死ぬまでに見たい映画◎◎選」とか「絶対に外さないおすすめ名画集」なんてページが嫌になるほど出てくる。ダメとは言わないが、アカンと思う。だって、どれもこれも皆、自分が見たものの中からしか選んでいない筈だからだ。人は時代と社会…

鷹と猛牛

昔々、南海ホークスというプロ野球球団があった。(1947~1988 今の福岡ソフトバンクホークスに連なる)シンボルマイクをデザインしたのは、今竹七郎。 近鉄バファローズというチームもあった。(1949~2004 今のオリックス・バファローズに連なる)そのシン…

「愉快にてみちたる戦争」

正岡子規の随筆集『筆まかせ』に「ベース、ボールほど愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」という一節がある。平出隆『白球礼讃』【1989年3月刊 岩波新書】のあとがきで知った。 子規も平出も無類の野球好きである。 続けてこうある。 「戦争とは物騒な、…

何でもない風景

映画には、何でもない風景なのに、やけに目に沁みて忘れられないシーンがある。そういえば、清岡卓行さんの詩にそんな一節があったよな、と ふと 思い出して、引っ張り出してみた。 現代日本詩集4. 『日常』【1962年 思潮社 刊】 「風景」の第一連。 あなた…

クラシックスからも 一つ 挙げてみる。公開当時一世風靡した「猫」 今見ると〈あざとさ〉が目につかぬでもないが‥‥やっぱり上手い。計算されつくしたつくりに舌を巻く。 www.youtube.com

のっけから

のっけからのけぞるようなのに出くわすこともある。 1960年代のアメリカ映画の冒頭シーン。思わず知らず引きずり込まれる。 www.youtube.com

固唾

映画を見ていて、「あー この画を撮りたかったんだな」と独りでニヤニヤすることがごくごくたまにだが ある。もちろん勝手な思い込みだ。けど、体が熱くなって、固唾を呑む。息を凝らす。舌を巻く。そんな場面に出会うことが、映画の魔・醍醐味のひとつであ…

けもの道 つづく

映画は名の知れた映画会社が作るものとは限らない。 木村プロダクション・木村元保さんは「1934年 東京墨田区生まれの鉄工所のオヤジさん」で「"特撮の木村"の異名で知られた関東の自主製作映画マニア」であり、「大映 (東京?)撮影所で三年撮影助手をしてい…

けもの道

木村元保さんのことを書いておこうと思う。 面識はない。知る人ぞ知る真正映画人だ。古い日本映画好きなら憶えているだろう1981年の映画『泥の河』の製作プロデューサーである。 オープニング映像。題名に続いてトップに出てくる。当時の映画業界の常識では…

a girl and a gun

ネットを漁ると、「拳銃と女さえいれば映画は撮れる」と言ったのは仏 J.L.ゴダールだという記事が幾つも出てくる。当のゴダール氏はそもそもそう言ったのは米 D.W.グリフィスだと主張しているという記述もある。 all you need to make a movie is a girl a…

再々論 映画は映画

映画が生まれて百数十年になるというのに、いまだに「映画は娯楽なのか、芸術なのか」という不毛(としか思えないよう)なやり取りが後を絶たない。先日も公共放送で いい歳のアナウンサーが、いい歳の映画監督に質問して、困らせていた。苦笑しながら監督は…