2ペンスの希望

映画言論活動中です

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「先端のことしか語れないのは‥退屈」

雑誌「日経ビジネス」のWebサイトで、ジョン・ジェイと佐藤可士和の対談記事を読んだ。よく知らないが二人は、ともに広告界で活躍するアートディレクターだそうだ。 【2014年2月24日配信「グーグルに頼る人は、世界を理解できない」第1回】ジェイ:先端…

反町茂雄さん

反町茂雄と聞いて、ピンとくる人は、古書好きだろう。 昭和に活躍した古書店業界先駆けのお一人だ。 1927年(昭和2年)東京帝国大学法学部を卒業して神田の古書店一誠堂書店の住み込み店員になった‥‥、と最近読んだ本で知った。【金郄謙二著『疎開した四…

俺たちは赤ん坊じゃない

イマドキの作り手なら誰だって「お涙頂戴」では駄目なことぐらい知っている。 それでも水分過剰、べたべた、ずるずるの作りモノが後を絶たない。 言い訳の一つは見えている。 「観客が望むから」「観客がそれしか許してくれないから」観客の胃袋が縮んでいる…

「紙の中にリアルがある」

芸術新潮2014年1月号がつげ義春を特集していた。 デビュー60周年という触れ込みだった。どんなものかなと手にとってみたが、巻頭記事が素敵だった。東村アキコさんという漫画家の《「やなぎや主人」に一目惚れ》 「‥マンガの読み方はふたつあると思う…

「薄情の情」

何時頃からだろうか、泣ける度とか笑える度が取りざたされ、直ぐ泣ける、手っ取り早く笑えるものを求めるようになって来たのは? 映画紹介ページには、泣ける度ランキング、笑える度指数が並ぶ。 そんなに皆、泣きたいの・笑いたいの? 映画ってそれだけ? …

平熱・素面 再論

平熱、素面と書いたら、反論された。 発熱するからモノが作れるんだ、酒気を帯びてこそ創作は生まれる、作り手はもっとハチャメチャでイイじゃないか、というわけだ。 交通ルールも赤信号も自己判断で無視すりゃいい。観客なんか知ったこっちゃない。 言いた…

2ペンスの希望 エンディング

当ブログのタイトルにも拝借している『2ペンスの希望』DUE SOLSI DI SPERANZA 1951年製作のイタリア映画だ。今日はちょっとした訳有りで そのエンディングシーン。 イタリア語がわかる人はそのままどうぞ‥。 ナポリ郊外ヴェスヴィオス火山麓の村、除隊…

平熱と発熱

昨日のブログ、何を言いたいのかよう解らんと言われてしまった。 記録映画とドキュメンタリー映画の呼称問題。 今のところ、たどり着いたのは、「体温の差」ということ。 「平熱」で手掛けるのが記録映画、「発熱」して取り組むのがドキュメンタリー映画。 …

呼称

記録映画といい、ドキュメンタリー映画という。どっちでもいいようなものだが、 言葉から受ける印象はちょこっと(いやかなりか)違う。中には観察映画と称するものもいる。ノンフィクションという言い方もある。最近余り聞かないが、以前は短編文化映画とも…

三十歳未満お断り

暴論を書く。 三十歳未満は映画を作ってはいけない ということにしてはどうだろうか。 作る前に見ろ。見て見て見倒して、品と質を学んで、技と術を盗んでから、初めて自分の映画を作ることにしてはどうだろう。 最近、各地の自治体や公的な機関で、映画の楽…

欲望の被造物

大昔たくさん読んだのに、内容を全く忘れている書物がある。 はてさて、何が書かれていたのか‥。 ガストン・バシュラールもその一人だ。『火の精神分析』『水と夢--物質的想像力試論』『空と夢--運動の想像力にかんする試論』『空間の詩学』『夢みる権利』‥‥…

裸の島=779万円

全く知らなかった。 新藤兼人監督の映画『裸の島』のロケ地・瀬戸内海の無人島が競売に掛けられていたことも、買取に向けて少なからぬ映画人が募金活動をしていたことも‥。 今日、京都で開かれたある映画の会で、出席されていた御婦人から教えて戴いて初めて…

現代・劇

昔 時代劇と現代劇という区分があった。 時代劇といえば、チャンバラや西部劇、古代史劇のことだった。 浴びるように映画を観ていた1960年代から70年代の現代劇は、今見直しても「現代劇」だと思って観ている。 数日前にある若い友人から、「五十年以上…

松林要樹さんという若い記録映画作家の本を読んだ。 『馬喰』【2013年12月30日河出書房新社刊】東日本大震災後、福島県相馬地方の人と馬の暮らしを綴った本だ。彼が作った映画『祭の馬』は未見だが、本は面白かった。 震災後ふと目にした馬のハレあがったチ…

引き続き枝雀のTV番組の話。 【BS朝日・ABC放送「君は『桂枝雀』を知っているか!?」】 「「前回受けたとおりやろうとすると間がおかしくなる」枝雀さんはつねづねそういっていた」と小佐田定雄さんが語っていた。たしかにタイミングを外すと笑えるものも笑…

進化無尽

もとより枝雀の魅力は理論にあるわけではない。 落語が抜群に面白かった。それがすべてだ。 それも一度完成したスタイルをどんどん進化させていったところが凄い。たゆまぬ精進、尽きせぬ進化。テレビでは、その様子を演目『代書(屋)』を例に見せていた。 …

「落語の快感構造」

昨日に続いて枝雀の番組から。「落語の快感構造」と題した考究を採り上げてみる。 遺された大学ノートの図解は↓ 第一層=趣向 第二層=笑い 第三層=「怖がる」を楽しむ 第四層=風情・生活・色気・季節感 第五層=直情発露(他を先にする心) と 末広がりに…

「笑いの13分類」

桂枝雀を特集したTV番組を観た。(知る人ぞ知る番組「君は『桂枝雀』を知っているか!?」【1時間54分BS朝日2013年11月24日放送・ABC2014年2月8日再放送】 知らなかったが、大変面白かった。枝雀といえば「緊張の緩和」が有名だが、番組では、落語の「笑い」…

文章10則

昨日に続いて‥カッパ・ブックス逸話本から。「文章十則」 光文社の週刊誌「女性自身」3代目編集長の桜井秀勲氏が提唱したものだ。一、やさしい文章で書くこと。 二、文章の長さに気をつけること。 三、まず“動”からはじめよ。 四、臨場感、生活感のある文章…

ベストセラーの作法

新海均著『カッパ・ブックスの時代』【2013年7月河出ブックス刊】を読んだ。 若い頃お世話になったカッパ・ブックスの栄枯盛衰を綴った本だ。 岩波新書とは対極に立つアンチ教養主義。出版界における編集者の役割・ヒットメーカーの存在が語られて面白い。中…

歌は唖(むご)に

上野英信さんの『地の底の笑い話』【岩波新書639 1967年5月初版】の扉に 掲げられた言葉―― 歌は唖(むご)にききやい 道ゃめくらにききやい 理屈ゃつんぼにききやい 丈夫なやちゃいいごっばっかい (鹿児島俚諺) いわずもがなだが、上野さんはこう解説して…

文体=持ち味

題材も主題(テーマ)もメッセージもいらない。 欲しいのは、文体だけ。最近とみにこの思いが募る。 文体を個性と言い換えても構わないが、今一番しっくり来ているのは「持ち味」という言葉。個性というよりもっと身体に染み付いた属性(性格とか行動特性)に近…

「往生し末世」

近所に新しい古本屋が出来た。 数日前『映画の見方が変わる本』【1989年9月別冊宝島100号】を購った。100円だった。帰宅して本棚を見たら同じ本が並んでいた。最近よくある話だ。全然驚かない。こだまひびきの漫才ではないが、「ボケとんねや〜」 …

映写技師

「フィルムも生産されなくなり、現像所も縮小し、映画館はほぼ完全デジタル化し、映写機の活躍の場がなくなりつつあるのが現実なのですが、‥」 愛読しているメルマガneoneoの最新号【ドキュメンタリーカルチャーの越境空間 『neoneo』 ニュース42号 2…

消えていく

時代の変化で姿を消していく職業は一杯ある。 先のスカブラやホットマンはもとより、炭鉱労働者も撮影所も過去形だ。 もはや文選工・植字工も居ない。写植オペレーターも見かけない。 映画の世界では、タイミング:フィルム現像所で画調や色のイメージを決定…