2ペンスの希望

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ベストセラーの作法

新海均著『カッパ・ブックスの時代』【2013年7月河出ブックス刊】を読んだ。
若い頃お世話になったカッパ・ブックスの栄枯盛衰を綴った本だ。
岩波新書とは対極に立つアンチ教養主義。出版界における編集者の役割・ヒットメーカーの存在が語られて面白い。中に創始者神吉晴夫が1955年4月「日経広告手帖」に発表した「ベストセラー10ヵ条」が載っていた。

1.読者の核を二十歳前後に置く
2.読者の心理や感情のどういう面を刺激するか。つまりテーマ(題材)の問題である。
3.テーマが時宜を得ている
4.作品とテーマがはっきりしている
5.作品が新鮮であること。テーマはもちろん、文体や造本に至るまで今までお目にかかったことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6.文章が読者の言葉遣いであること
7.芸術よりモラルが大事
8.読者は正義が好き
9.著者は読者より一段高い人間ではない
10.編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ

五十年以上も前の文章である。そのまま当てはまるものではないし、全面的に支持出来るわけでもない。が、自主・自前で映画を作ろうという時、初期設計段階で目を通しておいても無駄ではなかろう。
映画が作り易くなって、直ぐにでも制作にかかる傾向が強い。止めろというつもりはないが、知らない所・見たこともない所まで船出するためには、一人よがり・自分勝手では勿体ない。「ビジネス抜き」は無し、その参考のひとつに‥いかが?