2ペンスの希望

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2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

つくらないでつくる

ここ暫く断続的にしつこく「背反有理」を綴ってきた。今日はその中間総括。 つくらないでつくる。これである。 無手勝流。(といっても正統塚原卜伝の「戦わずして勝つ」それではない。作るのだ。 ただし自分流=手に武器・道具を持たずに作る無手勝流) よ…

石井一男さん

絵を買うなんて考えたこともなかった。第一そんなお金もないし、コレクターなんて醜悪なブルジョワ趣味、そう思ってきた。禁を破って数年前一枚の絵を買った。石井一男さんの「女神」シリーズの一点。サムホール(228mm×158mm)の小さな絵だ。石井さ…

今何が‥現実>表現

この建物何かお分かりだろうか。遊園地でもラブホでもない。 大阪市此花区の埋立地に作られた大阪市環境局舞洲工場ゴミ処理場の建物(2001)だ。高さ120メートルの煙突は「偽窓」で飾られシンボルタワーみたいに聳え立つ。知らなかったが、大阪の人には…

今何が‥「新しい映画」

今ほど「新しい」映画が作りにくい時代はないのではないか?そう思えてくる。 確かに機材は安くなった。扱い方も簡便だ。しかしそれだけのこと。 先達の達成に敬意を払い十全に受けとめた上で何か「新しい映画」を作らなければ映画をつくることに意味はない…

武満の顔

今日は『他人の顔』のワルツ。 大昔確かに見た筈だが、このシーンのことは全く記憶にない。 ロケ地は新橋ミューヘン ドイツ語で歌うのは前田美波里 作曲は武満徹。 酔客の中に顔があった。 あの頃は、前衛的な(といわれる)映画作家が大手映画会社(撮影所…

今何が‥勁(つよ)い映画

強い映画が見たい。 今一番求められているのは、「強い映画」だと思う。 本当のことと正面から向き合った強い映画。 より正確には、勁(つよ)い映画と書きたい。 「勁(つよ)い」とは‥手元の辞書によれば「力強く張って、たるまない意。 【意味】力強く外…

今何が‥風呂敷

今日もまた、嫌ごとを書く。 不平不満・お小言の類いは口にしたくはないのだが、自戒も込めて書いておかないと忘れそうなので、しばしお付き合いを願う。 導入部は何とか見せるが、途中から行方不明になって、ラストは失速して空中分解、 あれあれ、どうして…

今何が‥肩すかし

気を抜いたり、手を抜いた映画が多すぎる。どれがというのではない。どれもだ。 手だれといわれるベテラン然り。新進気鋭といわれる若手然り。 映画が相対的に簡単に作れるようになって以降、脇が甘い映画が増えた。 「これは何の映画なんですか」と訊きたく…

今何が‥立ち往生

商売柄、今何が受けそうか、どんなものがヒットしそうか、と聞かれることがある。大半は、それが分かれば苦労はないとかわすことにしているが、正直、観客は何も望んでいないのだと思う。ただ目の前に出された料理を黙って食うだけ、そう思っている。不味け…

藤山一郎

♪若く明るい歌声に 雪崩は消える 花も咲くゥ〜 言わずと知れた『青い山脈』(といっても若い人の中には知らない人も増えてきていそうが‥)昭和を代表する歌手である。生前彼がこんなことを言っていたと最近知った。 「ハートで歌うという歌手がいるけれど、…

しなしなして

《しなしなして、よく悉(つく)す》というのは、徳富蘆花が鈴木三重吉を評した言葉だそうだ。復刻された『蘆花日記』に出てくるらしい。知ったのは、上野洋三さんの本『芭蕉の表現』【岩波現代文庫 2005年11月刊】その「あとがき」で読んだ。 上野さ…

ふらっと

肩を怒らせて、青筋立てて、というのは苦手だ。勘弁願いたい。 生来軟弱なもんで、ふらふらふらっとフラットに行きたい。若い頃からそんなふうにやってきた。ふらふらでは、いかにも聞こえは悪いが、えーいままよ、アナタまかせの風まかせ。なるようにしかな…

映画は夢である

いうまでもなく、 映画は夢である。 「こうありたい こうあったらいいな」という夢心地。切なる願望。理想としての夢。 夢のような出来事。それはまた 絵空事・嘘・つくりもの。 こうもいえる。 夢はまた悪夢である。 「こうありたい」の裏側には「こうだけ…

「ちいさすぎてはいらない」

さらにさらに「背反有理」を続ける。 「ちいさすぎてはいらない」というシナリオがある。書いたのは田辺泰志監督。発表された初稿は今から45年前1968年6月。【雑誌「小説と映画」3号 ’68 春 】 シナリオ冒頭には、「屍体の方がちいさすぎて棺桶に…

「雨が空から降れば」

今日は、どうしても小室等さんの「雨が空から降れば」を採り上げたい。 作詞 別役実 作曲 唄 小室等 1995年1月17日阪神淡路大震災の時は東京に居た。阪神間の実家は全壊したが、家族は青痣だらけになりながら何とか怪我もせず無事だった。再会しホッと…

「悲しすぎて笑う」

さらに背反有理 続き。 『悲しすぎて笑う』佐賀にわかの女座長筑紫美主子の半生を描いた森崎和江さんの本のタイトルだ。【1985年6月文藝春秋刊】 北海道生まれ白系ロシア人の父を持つ少女が道化芝居・佐賀にわかの女座長として生きた大正から昭和を活写…

青龍さん

背反有理 続き。 井上青龍さんという写真家が好きだった。最近その評伝が出た。 書かれたのは太田順一さんというこれまた好きな写真家だ。写真家らしい文章。的確に一瞬を捉える眼力+筆力。読み終わるのがもったいなくて、上等のウヰスキーみたいに毎日ちび…

映画だけじゃない

あらゆるジャンルがそれぞれに行き詰っている。映画だけじゃない。演劇も美術も。詩も小説も。ひっくり返して、風穴を開けるものはいるのか?(そもそも風穴なんてあるのか?もはや風穴という発想自体が古くさいのか‥‥そんな気もしてきて、ときには弱気にも…

「イメージの詩」

昨日よしだたくろう(吉田拓郎)の歌詞を書いたら、俄然聴き直してみたくなった。 で、久しぶりに 唄。聴いたことがある人は久しぶりに、初めての人は騙されたと思って聴いてみて。多少長いのとライブ録音なので歌詞が聴き取りにくいけれど‥ 古い船には新しい…

ターンオーバー

以前「ターンオーバー(Turn over)」と題する映画を作ったことがある。公開途中にタイトルを変えたので今は、原題としてしか記録には残っていない。ターンオーバー: ウイキペディアを見ると、「生物学における代謝回転:生物の組織や細胞の増殖と死滅、生体…

背反有理

映画の世界にも印象的な言葉は幾つもある。或る先輩の言葉。「映画というのはきちんと撮ってあれば、作り手の意図を超えて、さまざまなものが伝わったり見えてくるのだ。画面に集中することからいろいろなものが見えてくる、聞こえてくる」 全く同感。拙の場合…

オリジナル

ある画家の公開制作を見に行った。 少なからぬ観客の目の前でキャンバスに向かって絵筆を揮(ふる)う。 暫く眺めていてハタと気付いた。そうなのだ。 ホンモノの絵画の前には間違いなく画家が立っていたのだ。オリジナルを観に展覧会に押しかけるのは、本物…

生きる指針

橋本新書【『その未来はどうなの?』集英社新書】二日目。ドラマ論。 先生の定義はこうだ。「どう生きて行くのかという指針のない世の中で、人が生きて行くための指針となったもの」その上で、二つのことが書かれている。 「万人向け」「国民的作家」「誰もが知…

向こうからやって来るチャチで下らないもの

映画も非道いことになっているが、テレビも落ち目である。目も当てられない。そんなテレビについての橋本治大先生のテレビ論。【『その未来はどうなの?』集英社新書2012年8月刊】(定価720円+税で、こんなに確かな正論が手に入るのだから有り難い。…

これは映画ではない

『これは映画ではない』2011年に作られ、2012年秋日本でも公開されたイラン映画のタイトルだ。公式HPに拠れば、監督は反体制活動を行ったとして2009年に逮捕され、裁判所から懲役6年と映画製作20年間禁止を言い渡されたとある。ということで…