2ペンスの希望

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青龍さん

背反有理 続き。
井上青龍さんという写真家が好きだった。最近その評伝が出た。
書かれたのは太田順一さんというこれまた好きな写真家だ。写真家らしい文章。的確に一瞬を捉える眼力+筆力。読み終わるのがもったいなくて、上等のウヰスキーみたいに毎日ちびちび味わいながら読んでいる。
本の裏扉に青龍さんの言葉が掲げてある。
「泣きたくなるほど好きであり、死んでしまいたいほど嫌い」な僕(青龍さん)自身の人間性を釜ケ崎の人達から照射された。写真集『釜ケ崎』【1985年11月銀河書房刊】からの引用だ。
よく分かる。
身悶えしたくなるようなアンビヴァレント。根拠なき自信(高揚)いわれなき不安(低迷)表現に携わる者なら誰しも感じるところだ。逆に言うならこの恍惚と苦悩の落差こそが、表現のエネルギーを生む。中合わせの強気と弱気
数年前に作ったニシナリの映画にも使わせてもらった青龍さんの写真を幾つか挙げる。