2ペンスの希望

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『不合理ゆえに〜』

思うところあって埴谷雄高不合理ゆえに吾信ず』【1961年6月刊行の現代思潮社版】を読み直した。
埴谷雄高さんがこれを書いたのは、昭和十年代(発表したのは1939年)
管理人が夢中になって読んだのが、昭和四十年代(1969年から70年にかけて)
それから半世紀が経った。読み返してみて、巻末の谷川雁さんと埴谷さんのやりとりが面白かった。
順序をひっくり返して引いてみる。
遙かな暗黒の空間へ向っていわば観念の弾機(ばね)によって永劫の一直線を保たせながら投げた筈の一つの小石が、いわゆるアインシュタイン宇宙のなかを遠く曲がり通って、思いがけず自身の後頭部に打ちあたるべく飛び向ってくる」(埴谷「遠くからの返事」)
私たちの耳はそのとき「そこまできたか」という声と同時に、「まだそこにいるのか」という声を聞きます。人々は――私をふくめて――歴史のなかに逃げこみます。
ふり落とされようと、誤った目的地へ着こうと、しょせん動くものは楽しい。動いているつもりにしてくれるものは安らかです。
」(谷川「作者への手紙」)
ふむ、拙管理人の「背反有理」の原郷のひとつはここらあたりかも。
■オマケ
背反有理の新ネタひとつ。
「心にもないことを言う 心にあることは言わない」 by 木皿泉