2ペンスの希望

映画言論活動中です

2022-01-01から1年間の記事一覧

桜木紫乃の小説

以前、『砂上』を読んで覚えていた桜木紫乃の『裸の華』【2016 集英社】を読んだ。 左脚の骨折で一度引退を決意した元ストリッパーの復活戦小説。ベタで通俗的なストーリーながら、判り易い人物造形と描写のディテールでサクサク読ませる。Wet and Dry しっ…

映画『ゆっくりあるく』

崟利子監督の映画『ゆっくりあるく』【2021年/81分/デジタル】を観てきた。 神戸映画資料館。84歳のダンサー川村浪子の舞踊を、 崟利子が撮った。 タイトルに込められた(と感じた)率直と含意のバランス。その絶妙。期待通りだった。 「ことば:その削ぎ落…

映画のレレレ

映画にはレベルがあり、レンジがあり、レイヤーがあるのだと思う。 レベル:level 水準 レンジ:renge 範囲(射程) レイヤー:layer 階層 レベルの想定、レンジの設定、レイヤーの確定、誰を相手に、どこまでの射程距離で、何層の積層体で作るのか。その見…

WE INSIST!

『村上春樹 映画の旅』という本がある。冒頭にはこうある。「早稲田大学演劇博物館では、このたび二〇二二年度秋季企画展「村上春樹 映画の旅」を開催いたします。小説家・村上春樹氏と映画の関係をさまざまな資料によって振り返り、氏の創作活動において映…

蒼頡 Cāng Jié

これも、最近知人から教えて貰ったひとつ。 「蒼頡 Cāng Jié 」の肖像画。 古代中国で漢字を発明したといわれる伝説上の人物だ。 そういえば、こんなのもあったよな。 最近のディズニーやピクサーにもいっぱいあるよな。

松永文庫

最近知人から北九州市の『松永文庫』のことを教えて貰った。 あれこれ書くより、ウエブサイトを紹介するほうが早かろう。 www.matsunagabunko.net 紀伊國屋書店の季刊誌『scripta』autumn 2022(no.65)都築響一の連載「移動締切日 30 」にも訪問記が載ってい…

日活映画『孤独の人』

昨日書いた『千代田区一番一号のラビリンス』に天皇にまつわる映画の話が出てくる。イッセー尾形が昭和天皇ヒロヒトを演じた A. ソクーロフの映画『太陽』(2005年) は知っていて観たけれど、日活映画『孤独の人』(1956) は初耳だった。 昭和の皇太子 明仁の…

森達也『千代田区一番一号の‥』

『千代田区一番一号のラビリンス』森達也の新作。といっても映画じゃない。小説だ。 例によって、帯の惹句はセンセーショナルだが、なに、それほどスキャンダラスじゃない。(幾分 あざとくはあるけれど。)『池袋シネマ青春譜』に続く森達也の半自伝的フィ…

前田真二郎 『BYT』

大阪中之島 国立国際美術館で『光の布置ー前田真二郎レトロスペクティブー』を見て来た。 1969年生まれ松本俊夫の「直弟子」の実験映像作家だ。メディアアートの作家は正直苦手だ。「意識高い」感が漂ってきて、挑戦的・意欲的なのはわかるが、見る側を…

映画『やまぶき』

大阪九条のシネ・ヌーヴォで映画を見た。山崎樹一郎監督の劇場公開第三作『やまぶき』京阪神公開初日。補助席二桁動員の大入り満員大盛況の滑り出し。期待と熱気に包まれた満席の映画館なんてホントに久しぶりだ。 長編第一作『ひかりのおと』(2011年)第二…

浜野佐知と高野文子 本二冊

浜野佐知の『女になれない職業 いかにして300本超の映画を監督・制作したか。』【2022.9.22. ころから 刊】、高野文子と昭和のくらし博物館 の『いずみさん、とっておいては どうですか』【2022.9.21. 平凡社 刊】を読んだ。 「ピンク映画から一般映画に転身…

SLOC

SLOCという言葉を知った。 S: Small L: Local O: Open C: Connected 小規模でローカルなプロジェクトが他の地域の人々と繋がり浸透していくための合言葉だ。インターネットが普及した世界で、回復力のある社会技術システムを設計するための四つのキイワイ…

メタ:META

最近「メタ:meta」という言葉をよく耳にする。 「メタフィクション」や「メタ発言」「メタ認知」「メタメッセージ」‥‥ Facebook社は Meta に社名変更したし‥「メタバーズ」とやらも話題だ。 そもそもは古代ギリシャ語だそうだ。 「あとに(立つ)」から転じ…

ことばの力 映像の力

ミシェル・フーコーの研究者で記号論・メディア論の専門家 石田英敬さんがこんなことを言っているのを目にした。 「テレビに花の映像が映し出されている場合、別に辞書を調べなくても、その映像が示したいものは見ればわかります。でも、それはつねにどこか…

やっぱり映画は音楽や建築に近い

あらためて、映画は文学や演劇より、ずっと音楽や建築に近いのだと再認識した。 ストーリーやドラマを否定するわけじゃないが、それ以上に重要な要素があるのだと思う。リズム(律動)テンポ(拍調)メロディ(旋律)ハーモニー(和音 コード進行)音色 ‥‥‥ …

「むしろ映画を撮っていない間に映画を作っている」

『幻の小川紳介ノート』【2022.2.7 シネ・ヌーヴォ発行 ブレーンセンター発売】をワクワク読んだ。 大阪の映画館シネ・ヌーヴォの景山理さんが永く預かったままでいた小川紳介の「トリの映画祭訪問記」を中心に、パートナー=同伴走者 小川洋子(白石洋子)の…

広くなって狭くなった

映画は作り易くなって、作り難くなった。 これが当管理人の基本認識である。理由は幾つも挙げられるが繰り返さない。(酔狂な御仁あらば、過去ブログを「作り易く」とでも「ワード検索」あれかし) 作られる映画の数は格段に増えた。映画館に掛かる映画もDVD…

岡村淳 冊子:備忘

今日も備忘メモ。『反骨の軟体 岡村淳の脳内図書 展示読本part1 part2』から。 2015年に東京学芸大学の古書店・古書遊戯 流浪堂で企画開催された展示会の副読本だ。移転で忙しい中、流浪堂店主 二見彰さんに送って貰って読んだ。 ブラジルに渡り、単身ドキュ…

『満映秘史』備忘

今日は備忘メモ。『満映秘史』から 「映画人の悪い癖で、自分のよくわからないことからは逃げようとする。もしくは人に丸投げして、判断を任せてしまう。自分なりに考えようとしないのだ。 映画人は映画にしか興味がない。それも、キャメラマンなら、キャメ…

74年ぶり

神戸映画資料館で清水宏の1948年製作の映画『明日は日本晴れ』を見てきた。 予約満席 補助席も出る盛況だった。上映後 大澤 浄さん(国立映画アーカイブ 主任研究員)の解説があった。三年前 ひょんなことから発見 発掘されたこと、恐らくは74年ぶりの上映だ…

『満映秘史』時を接ぐ

『満映秘史 栄華、崩壊、中国映画草創 』【2022.7.10 角川新書】をスコブル面白く読んでいる。 ノンフィクション作家の石井妙子が女性映画編集者の草分け 岸富美子(1920~2019)にインタビューして書いた本だ。 「あとがき」にこうある。 人は皆、時代の申し…

ファスト映画 早送り視聴

小田嶋×武田本『災間の唄』から、もう一つ。 ホントかどうか知らないが、若い世代では「ファスト映画」とか「早送り視聴」が当たり前なのだという。 ファスト映画は、「映画の映像を無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめてストーリーを…

「論理映画」「文学映画」

本『災間の唄』【2020.10.31. CYZOサイゾー 刊】を読んだ。2011年から2020年にかけてコラムニスト小田嶋隆がツイッターに投稿したツイートをフリーライター武田砂鉄がセレクトした本だ。 ツイッターはやらないので近づいたことはない。小田嶋隆は好きだった…

NDU 発掘2本立て

御贔屓 NDUの新発見フィルム2本が上映されるというので、いそいそと神戸・新長田の神戸映画資料館に出かけた。「神戸発掘映画祭2022」のプログラム「NDUと布川プロの新発見フィルム」上映会だ。 席数38のこじんまりしたシアターだが、30人ほどが詰めかけ…

「編み映画」のススメ

数か月前に目にしてから何だか引っかかっている言葉がある。「編み本」岩波書店のPR誌「図書」2022年8月号で読んだ斎藤真理子さんの「編み物に向く読書」に出てくる言葉だ。 編み物好きの彼女は「小説やエッセイを読みながら編み物をする」のだが、「他の人…

『文にあたる』からさらにスピンオフ P.マーロウ [ hard : gentle ]

私立探偵フィリップマーロウを主人公とするレイモン・チャンドラー(1888~1959)の探偵小説シリーズ 第七作『プレイバック』 作中、ヒロインから、 ❝ How can such a hard man be so gentle? she asked wonderingly. ❞ 「あなたの様にhardな人が、どうしてそ…

『文にあたる』からスピンオフ(寺田寅彦)

牟田都子『文にあたる』から少しはみ出して、今日は森銑三と寺田寅彦。 森銑三(1895~1985)は独学在野の歴史学者・書誌学者だ。 『書物』【1944 岩波文庫 柴田宵曲との共著】では 「書物には誤植がある上に、原稿の誤書があり、文字の誤用がある。その上に内…

『文にあたる』から

フリーの校正者・牟田都子( むた さとこ)さんの本『文にあたる』【2022/8/30 亜紀書房】を読んだ。 冒頭になにがしかの本(の一節)を採り上げ、それにまつわる思いを綴った短文集だ。 印象的だった箇所をいくつか挙げてみる。 ◆「かんなをかけすぎてはいけな…

映画『REVOLUTION+1』を巡って⑤

反響 波紋を少々 料金:前売¥2,000 / 当日¥2,300(共にドリンク代別) 13館 どの会場でも予約開始早々にSOLDOUTしたみたいだ。 名古屋シネマスコーレ 発売前からチケットを求めて並ぶ人たち 日刊ゲンダイDIGITALの2022/9/28/13:30 配信記事にはこうある。 …

映画『REVOLUTION+1』を巡って④

映画はどうやら「獄中で回想するという形式」ですすむようだ。 「主人公の川上達也の母は、宗教に身を投じ3人の子の面倒を見ない。妹は「ハンバーグを週1でいいから食べたい」と泣くがそれを母が叱る。さらに、父の自殺、兄の失明も重なる。大学進学を諦めた…