2ペンスの希望

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『満映秘史』備忘

今日は備忘メモ。『満映秘史』から

映画人の悪い癖で、自分のよくわからないことからは逃げようとする。もしくは人に丸投げして、判断を任せてしまう。自分なりに考えようとしないのだ。

 映画人は映画にしか興味がない。それも、キャメラマンなら、キャメラのことだけ。けれどキャメラの知識なら誰にも負けない、というのが誇りだった。それ以外のことはわからないし、わかろうともしないというのが良くも悪くも技術者の気質だった。224頁

自分が何も考えずに生きてきたように思えた。これからは、自分でものを考える人間になりたいと思った。映画技術者は私に限らず、職人気質で関心の幅が狭くなりがちだった。映画だけに関心が限定され、広く世間や社会を知ろうとしない。私も編集の仕事を覚えようと必死だった。だが、それではいけなかたのかもしれない。何よりも社会を知ろうとしなければと思った。これまでのように他人任せにして付き従うのではなく、自分で調べ、自分で判断し、自分で考える人間になりたかった。315頁 (太字強調は引用者)

満映の仕事場にて。岸 (右) 二十二歳。

どれも当たり前のことが綴られているだけだ。けど、それが尋常ならず険しく難しいことを身をもって体験した人の言葉ゆえ、眩しい。