2ペンスの希望

映画言論活動中です

2015-01-01から1年間の記事一覧

The Times They Are a-Changin'  

機器の進歩が危機をもたらすことは何度か書いてきた。便利は不便、進化は退化。 けど嘆いても始まらない。前進あるのみ。よし 匍匐前進、超低空飛行であろうとも。 変わったもの、変わらぬものを見定めながら、前を向くだけだ。無駄な力は抜いてわきを絞め、…

クオリティ

東京で仕事を続けている同年輩のキャメラマンと話をした。 フィルムでキャリアをスタートして業界横断的に色んな仕事をしてきた。 デジタルシネマカメラは10年前には考えられないほど進化した。暗部のしまりが悪い、黒の階調に難ありと言われ続けてきたが…

『新しい民』

今年最後の映画館。大阪九条シネ・ヌーヴォで一般公開二日目山崎樹一郎さんの新作『新しき民』を観てきた。少し前のチラシ(上)と公開チラシ(下)を挙げる。 初日は満員スタートだったようだが、二日目の日曜日は30名あまり、5割弱の入りだった。多いのか…

『男の花道』 昭和天皇

面白いものがあるよ、と歴史好きの知人が教えてくれた。 原武史『「昭和天皇実録」を読む』【2015年9月 刊 岩波新書新赤版1561】 巻末に「太平洋戦争期における天皇の映画鑑賞一覧表」が載っている。昭和天皇が映画をよく見たことはうっすら知っていた。実録…

DTM or DTC

3Dプリンタやレーザーカッターがモノづくりの世界を変えた。 マスプロダクションの時代からパーソナルファブリケーションの時代へ。 出版はDTP(デスクトップパブリッシング:卓上出版)が当たり前となり、音楽もDTM(デスクトップミュージック:DT…

見られるようになってしまったために‥

頻繁にではないが、間歇的にふや町映画タウンのO店主さんと会っている。ふや町映画タウンは、(何度か書いてきたが、)京都のど真ん中にある旧作映画専門ビデオレンタルショップだ。VHSしか置かない。今どき奇特なお店。邦画の品揃えは世界トップクラス知…

現在地

ウエルメイド:良く出来た仕立てのいいものよりも、誰もまだ見たことのない「新しさ」に惹かれる。そんな思いが募る中、島田一志さん(1969生)編集の本『マンガの現在地! 生態系から考える「新しい」マンガの形』【フィルムアート社2015年10月 刊】を読んだ…

Vine

若い知人から「Vine(バイン)」というのを教えて貰った。 スマホで簡単に動画が撮れ、SNSなどにアップ出来るアプリだ。 ライター牛島義之さんの解説【「エンジョイ!マガジン」2015年4月2日配信】を引く。 「「Vine」はTwitter公式のサービスで、6秒間の動画…

写真集『映画館』

『映画館 : 中馬聰写真集』という写真集を読んでいる。【リトルモア 2015年5月 刊】 北海道から沖縄まで37の都道府県の142軒の映画館を訪ね、モノクロ写真中心に収めたものだ。自身映写技師でもある中馬さんならではの舞台裏、映写室や映写機もたっぷり載っ…

『Happy Hour』

東京に先駆け、撮影地神戸で先行上映されている映画『 Happy Hour 』を観てきた。数日前に推奨した映画『親密さ』の監督さん濱口竜介さん(37歳)の最新作だ。 以前どこかのインタビューでこう語っていたことを思い出した。 「映画に限らず、フィクションとい…

「つまらんでしょ」

水木しげるさんが亡くなった。93歳だった。お悔やみがたくさん流れたが、つげ義春さんの言葉が印象的だった。備忘録的に記す。 出典は、「朝日新聞デジタル 2015年11月30日21時06分 配信」 「漫画家つげ義春さん(78)は若い頃の5、6年間…

出る杭

砂田砂鉄さんの『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』という本を読んだ。 【朝日出版社2015年4月 刊】筆者は1982年生まれ、雑誌やウエブに寄稿するライターさんとのことだ。正直、本文はいまひとつ。内容文体ともにスカッとしない。タイトル以外は感…

『親密さ』

ヒリヒリする映画を見た。2012年の日本映画。 撮ること、演じること、見ること、そのスリルとサスペンス。ハラハラドキドキ。 弱さと強さ。もろさとかたさ。近さと遠さ。細かな注文はあるが文句なし。たどたどしくもきっぱり迷いなし。溢れながらに過不…

難儀なこと

難儀なことになっている。 脚本は練られてる、役者も悪くない、演出も巧み、スタッフ各パートの仕事ぶりも丁寧、健闘している。普通に考えればよく出来た映画・合格点。なのに、何故か不満が残る。不全感がぬぐえない。無い物ねだりなのはわかってる。昨今、…

古文書みたいな‥

「ドキュメントするとは、制作者や作家が、自分をそのまま素材にすることなのだ。自分の恥部をさらけ出したままで相手にぶつかり、自分の毒で相手にせまり、自分の毒をふりまくことで相手(たとえばあなた)の武装を切り裂き、あなたの汚れ、あなたのずるさ、…

不可視の可視化

昨日とはさかしまなことを書く。 不可視の可視化・見えないものを見ようとする意志こそが映画の推力となる。 そんな映画だけが新しい映画の名に値する、強くそう思う。 どれだけシナリオがよく書けていても、作る前から仕上がりのすべてが見えている・見通さ…

ミルフィーユ

映画は練り製品だ。何人何十人のスタッフが持ち場持ち場で練りに練り工夫を凝らして拵える複合生産物。旨味が何層にも積層した“ミルフィーユ”。 だからこそ、どんな楽しみ方をしようと構わない。味わい方は多種多様に開かれている。 映像を楽しむ、ストーリ…

賞味期限

映画の賞味期限について考えた。 数年前から定期的に旧作映画を見る会に参加している。最近見たのは O.ウェルズ『市民ケーン』(1941)と小津安二郎『一人息子』(1936)の二本立。 かたや、 天才映画人による、怪物市民の生涯を描いた意欲満々「大文字」のス…

遅効性

映画にも即効性の映画と遅効性の映画がある。 即効性の映画とは、例えば往年のヤクザ映画。劇場から出てくる男性客は一様に眼光鋭く肩をいからせて健さん気分。分かり易い。 ジェットコースター(ローラーコースター)・ムービーなんてのもそうだ。息もつかせ…

いでよ映画史家

京都ふや町の旧作VHS専門店「ふや町映画タウン」については何度か書いてきた。 少し前に出掛けた時、O店主と話したことが頭を離れない。 「映画の歴史が始まって一世紀超、1980年代に LDやβmax・VHSなどが普及してから既に四半世紀が経った。なのに…

『夜の終わりに』

「青春群像」と云えばもう1本、ポーランドA.ワイダの『夜の終わりに』1960を思い出す。原題:Niewinni Czarodzieje 「無邪気な魔術師」誰の発案か知らないが、邦題はかっこよかった。 (配給会社 新外映のどなたかが付けたのだろう。) 観たのは高校時代、…

『青春群像』

見逃していた古いイタリア映画を見た。初見。 1953年 F.フェリーニの第三作『青春群像』原題は I Vitelloni:「乳離れしない仔牛」という意味だが、北イタリアの方言では「のらくら者たち」のことを云うらしい。 いやぁ、お見事。エンディングを観てもらい…

写っているのはすべて過去である

映画に写っているのは、すべて「過去」である。 これがTVとの違いだろう。テレビの本質は現在進行形・同時中継・生・ライブだ。 大昔「お前はただの現在にすぎない」というテレビ論があった。中身はすっかり忘れてしまったが、タイトルは今も鮮やかに憶え…

そして誰もいなくなった

今 映画は一人でも作れるようになった。機械技術の進歩のお陰と、有り難がる声が聞こえる。一方、お陰でえらい迷惑、そんなつぶやきがあることも忘れたくない。 撮影所があった頃の専門職・技術集団は見当たらなくなった。照明部が消え、録音部が減り、大道…

「意味がないから好き」

「ぼくが音楽が好きだというのは、意味がないから好きなんですね。意味が入ってくると、とたんにつまらなくなる」 タモリの言葉だ。 まったくその通り。 木皿泉の連載エッセー最新号にもこんなやりとりがある。 弥生犬(書き飛ばしてますねぇ。放送が終わっ…

松谷武判

松谷武判の展覧会を観てきた。西宮大谷記念美術館。 「木工用ボンドのふくらみを鉛筆の黒で塗りつぶしていく手法」で知られる画家だ。 知り合いのキャメラマンが何年も前から撮影を続け既に3本のDVDを完成させている。そんな縁もあって、これまでも何度…

不或

面白い文章を目にした。 安田登さんという能楽師が紀伊國屋書店発行の季刊冊子“scripta”に連載中の「野の古典5 ふつうの人のための論語」【no.37(autumn 2015)】 「実は孔子の時代の漢字は、いま私たちの使っている漢字よりも数が少ないのです。 私たちがい…

大衆演劇②

大衆演劇、昨日の続き。 たしかにマイナーといえばマイナーだ。歌舞伎 文楽 新派 新劇 喜劇 小劇場‥‥あまたある演劇にくらべるとずっと“格下”に見られてきた。昨日の橋本正樹さんの本「晴れ姿!旅役者街道」にも、 「変容しつつある大衆演劇だが、大抵の方に…

大衆演劇①

樋口次郎 沢竜二 美里英二 見海堂真之介 里美たかし‥‥と聞いてピンと来る人はどれくらいおられるだろう? では 梅沢富美男 松井誠 早乙女太一 チビ玉三兄弟 ‥‥とくれば? そう大衆演劇の新旧スターさん達だ。 少し前にラジオで橋本正樹さんという大衆演劇フ…

Nollywood

まともな映画館は10館だけ という国もある。西アフリカのナイジェリア。 暗い映画館では犯罪が起こる可能性が高いため、金持ちしか入れないよう入場料は5,000円に設定している、とネットにあった。(今日はネットで仕入れた情報を元に書く。よって真贋…