2ペンスの希望

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出る杭

砂田砂鉄さんの『紋切社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』という本を読んだ。
朝日出版社2015年4月 刊】筆者は1982年生まれ、雑誌やウエブに寄稿するライターさんとのことだ。正直、本文はいまひとつ。内容文体ともにスカッとしない。タイトル以外は感心しなかった。とはいえ、「そうだよな」と思った箇所はある。以下引用。
(「プレスリリース化する社会」の項から)
職業柄、音楽・書籍・映画・美術展のプレスリリースに触れることが多い。年々、バカ丁寧に作られたものが増え、対象の作品に直に触れなくてもおおよその枠組みが見渡せてしまう仕上がりになっているものが少なくない。受け手の感性を懇切丁寧に蔑んでいるとしか思えない説明過多‥(中略)‥。内容・要点・着眼の全てがプレスリリースで済まされている。こうなると、使っている具材の紹介ではなく、出来上がった料理の味・食べ方・保存法が書かれているようなもの。」「提供されたパーツだけを使い、枠組み自体は変えない。こんなものをレビューと呼んではいけない。‥(中略)‥。私怨を込めれば、生産業ではない加工業と一緒くたにされたくはない。」 憤りはよくわかる。(けど、リリースを受け取る側の多忙と劣化という問題もあるしなぁ。) 末尾にはこうあった。
出る杭があれば育てなければいけない。出てこないで横目で既存の杭を見てそこに背丈を合わせてくるような杭にばかり餌を与えてはいけない。そんな杭は絶対にオリジナルな言葉を持たない。そんなコピペが続くと、文化はのっぺりと揃って、多くの可能性を無自覚にぶっ壊してしまいはずだ。」 (強調:引用者)
プレスリリースだけのことではない。