2ペンスの希望

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2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

望都メモ その2 際限なく細心に

萩尾望都『一度きりの大泉の話』【2021.4.30. 河出書房新社 刊】から、もうひとつ。物作りの必要条件その2。 「漫画家は阿漕な商売です。好きでなければ続けられません。 私は15ページの連載に5日かけて苦心惨憺してネームを作っていました。2行のネーム…

望都メモ その1 覚悟と責任

遅れ馳せながら、萩尾望都『一度きりの大泉の話』【2021.4.30. 河出書房新社 刊】を読んだ。 少女漫画ファンの間では有名らしい〈花の24年組〉たちの〈大泉サロン〉での出来事・顛末を萩尾望都が綴った「日記というか記録」本だ。 ■〈花の24年組〉とか〈大泉…

足が地に着いて‥

あわよくばとひそかに期待していたが、国際長編映画賞のみの受賞にとどまった映画『ドライブ・マイ・カー』の受賞後記者会見の全文がNHKのサイト(エンタメ・ページ)にあがっている。 ⇒【全文掲載】「ドライブ・マイ・カー」濱口監督 受賞会見 | NHK | エン…

物としての実在感 それを支える技術

本の世界に長谷川郁夫という人がいた。編集者というより出版人。1972年大学在学中の1972年に仲間五人と「小沢書店」を立ち上げ、終生本づくりに励み2020年5月亡くなるまでに六百数十点を出版した。 「小沢書店をめぐって」というインタビューでこんなことを…

スタートはどこ?

スタートはどこ? ‥‥そして、ゴールは? 恩田陸と小川洋子の対談を読んでそんなことを考えた。KAWADEムック『恩田陸 白の劇場』【2021.2.28 河出書房新社 】所収の対談「小説と世界の秘密」(初出「群像」2006年4月号) 小川洋子 小川:純文学からスタートした…

大きな袋

司馬遼太郎はまともに読んだことがない。苦手だ。文学者というよりジャーナリストだと思っているせいかもしれない。優れた物書きであることは承知しているが、作家としては1.5流だと思ってきた。観察眼と見立ての達人。最近読んだ『2016年の週刊文春』【柳…

「乗り物に乗るように」

米国アカデミー賞にノミネートされて何かとかまびすしい濱口竜介監督だが、仏蘭西カンヌ映画祭で「映画を通じてどんなことを伝えたい」というQにこう応えている記事を読んだ。 「こういうことを伝えたいというのは、特にないというのが正直なところです。体…

「巨人の肩の上に乗る」

往復書簡本『限界から始まる』からもう一つ。上野千鶴子→清水涼美宛。 「「巨人の肩に乗る」という表現があります。自分が小人でも、巨人の肩に乗れば大きな視界が拡がります。そのように後から来る者は、つねに先を歩いた者の「肩の上に乗る」特権を持って…

文体は必須スキル

久しぶりに上野千鶴子センセイの本を読んでいる。『限界から始まる 上野千鶴子 鈴木涼美 往復書簡』【2021.7.5. 幻冬舎 刊】 上野センセイのことは正直たぶん終生好きにはなれないけれど、研究者としては一級品だと評価している。(身も蓋もないすっぽんぽん…