あわよくばとひそかに期待していたが、国際長編映画賞のみの受賞にとどまった映画『ドライブ・マイ・カー』の受賞後記者会見の全文がNHKのサイト(エンタメ・ページ)にあがっている。
⇒【全文掲載】「ドライブ・マイ・カー」濱口監督 受賞会見 | NHK | エンタメ
ヘッドライン、サマリーでは物足りない。つまみ食いでは勿体ない。時間があれば全文読む方がいい。素直に興奮し舞い上がりながら、浮足立たずちゃんと足が地に着いている姿勢が伝わってくる。
いつまでネットで読めるのかわからないので、かいつまんで濱口発言のポイントを幾つか。
「アメリカの観客はある種、厳しいところがあって、おもしろいかおもしろくないかで見ていくところがあるんだというふうには思っています。」
「ここが到達点だったらやだなっていうことでここが通過点だといいなということを思っています。」
「‥プロデューサーの方たちの尽力のおかげもあって、準備に時間をかけて作ることができたということは、とても貴重なことだったと思っています。
いわゆる商業映画というものをつくって2本目ですけれども、今回やっぱりすごく皆さんが、その準備の大切さというものを理解して、作ってくださったっていうことは感じていて、その準備を時間をかけたことによって、こういう結果が得られているんだということは言いたいですし、もしそれを参考にしてやってみたいという方がいてくれたらそれはすごくありがたいことだなということを思います。
この時間かけるっていうことはやっぱりとても大事なことで、時間をかけるっていう意思さえあれば、せきたてられるように仕事をしなくても済むし、お互いをリスペクトするようなそういう環境も生まれやすいということを思うので、これは本当に映画界だけではないと思うんです。
時間をかけて本当にこのことに価値があるんじゃないかっていうことを、みんなでやるっていうことができたら、それはやっぱり今より少し幸せなことなんじゃないだろうかと私は思うので、‥」
ファスト映画、倍速視聴、タイパ(タイム・パフォーマンス)なんてのが横行しているようだが、時間をかけて頭を熱くしたり冷やしたりしながら腕を磨くこと、互いに切磋琢磨した総和を愛でることを忘れてはきっと何も始まらない。スタッフワーク、チームプレイは遠くまで行くための必要条件なのだろう。