2ペンスの希望

映画言論活動中です

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

生ものと練り物

大衆演劇はきらいじゃない。 とはいうもののここ十年以上はご無沙汰なので、ファンとはとても言えない。それでも昔から現風研の年鑑や鵜飼正樹さん、橋本正樹さんらの本は熱心に読んできた。そんな流れで、木丸みさきさんのコミックエッセイ本『私の舞台は舞…

あいのこ

あいのこ:合いの子、間の子、混血児、‥‥。 昔はハーフといった。それが差別的だと、今はダブルと言うようになってきた。 ハイブリッドなんて表現もある。 異種交配。新しい。めずらしい。これまであまり見たことがない。 馴染みがない。今までと違う。よく…

芸のあるなし

京都の旧作VHS専門レンタル店「ふや町映画タウン」のことは何度も書いてきた。 店主のオーモリさんは、ずっと若い後輩なのだが、 会うたびに様々な刺激をもらう頼もしき映画人(映画本位制で生きている人)の一人だ。その映画的記憶・映画史的知識には毎回…

映画:ながすぎる

J・ルナール『博物誌』の「蛇:ながすぎる」じゃないが、 「映画:ながすぎる」。 最近の映画は2時間を超えるものが増えているように思う。 長くても面白ければ、いくらでも付き合うし我慢もできるが、冗長冗漫ダラダラもたもた、どこに連れて行ってくれる…

需要あればこその

「需要があればこその細分・専業化」 先日読んだ本で印象に残った言葉だ。 【出典は 土田昇著『時間と刃物 職人と手道具との対話』2015年1月芸術新聞社 刊】 本文では、「細分・専業化が品質の安定と価格の低下を約束する」と続いて、 道具鍛冶職の近代化そ…

非劇

悲劇じゃない。非劇。 非劇場上映:映画館・劇場以外での上映形態を指す言葉だ。 統計に当たったわけでもないので例によっていい加減な当てずっぽうで云うのだが、 映画を映画館以外で見るケースは飛躍的に増えているのはないか。そう思っている。 自主上映…

「選択する」

演出家・監督の仕事の根本は、「決めること」だと思っている。 何かに決めること、何かを選ぶことは、それ以外の可能性を捨てることだ。覚悟と責任がなければ出来ない。そう思ってきたら、先日書いた土田昇さんの本『時間と刃物 職人と手道具との対話』【201…

映画という「飛び道具」「遊び道具」

久しぶりに請け負い・頼まれ仕事でなく、自前・自腹の映画をリリースする。 先日MAを終えて初号が完成した。タイトルは『千鳥百年』。30分の短編文化映画だ。百年前大正時代に鳥取で生きた夭逝少女詩人「田中千鳥」の映画である。 これからお披露目に向か…

Tさん

映画を見に行くのはほとんど一人だ。単独行。別に自慢でなく褒められた話でもない。 むしろ寂しく冴えない話だ。 むろん、男友達や女友達と出掛けたことも数しれない。 カップル、デイト。ただ、その時には映画を見るより別の思惑・目論見があることが多い。…

すべて売り物

昨日久方振りに、京都文化博物館フィルムシアターで映画を観てきた。 アンジェイ・ワイダ『すべて売り物』1968年の映画だ。ポーランドから初来日したワイダ研究第一人者の大学教授氏の特別トーク付だった。「本作は、列車に飛び乗ろうとして事故死した人気俳…

千代鶴是秀

今年前半読んだ中で、抜群・出色の一冊 土田昇 著『職人の近代 道具鍛冶千代鶴是秀の変容』【2017年2月みすず書房 刊】 土田昇さんは1962年生まれ。東京・三軒茶屋に店を構える大工道具屋「土田刃物店」の店主さんだ。(余談だが、四半世紀前 三茶に住んでい…

何をいまさら青臭い

何をいまさら青臭い、青二才でもあるまいに、ポンコツ寸前のロートルが何をほざく、 と嗤われそうだが (苦笑、失笑、嘲笑、冷笑、憫笑、蔑笑、毀笑‥‥何でも好きなのを入れてくれ)、 いまだに映画に「監督」とか「作品」とか書くのも見るのもこそばゆい。躊…

藁の職人

小塚昌彦さん。1929年生まれ。毎日新聞社技術本部で活字書体の開発に携わり、 その後モリサワ写植用書体を経て、アドビでフォント制作ツールも手掛け、小塚明朝、 小塚ゴシックなどの名が残る、日本活字界正真正銘のレジェンドの一人。 「『駕籠に乗る人かつ…

空族サーガ

山梨甲府を中心に活動してきた映画集団 “空族” の軌跡を綴った2分13秒。 彼らのことはこれまでも何度か取り上げてきたが、そそられる画がある。 若い若いと思っていたが、活動開始から二十年あまりも経っていることに改めて驚く。 初期の8mm画質が懐かし…

「血の一滴」

ここ数年で定期購読している紙の雑誌はゼロになった。 そんな中、WEB上でほぼ欠かさず読んでいるのが、日経ビジネスオンライン:小田嶋隆のコラム「ア・ピース・オブ・警句 〜世間に転がる意味不明」だ。 その最新号=2017/6/9配信「データは人生であり、墓…

えぐい映画

えぐい映画を見た。 日本国内では超有名な高齢喜劇監督の前作。 「早くも地上波に登場」という惹句に引き寄せられて、テレビ放映を見た。 従って、只見。なので、エラソーなことは言えた義理じゃない。 けど、ひどかった。何がって、お話が。ストーリーも世…

ヒントとコントが‥

藤井青銅『幸せな裏方』の中から、印象に残った記述を二つ三つ。 ■ 「この時、ぼくはおぼろげながら「ラジオとテレビの立ち位置の違い」ということを感じた。つまり、ラジオを聞いている人の間ではとっくの昔に「面白い」と評判になったことが数年遅れてテレ…

虫明と青銅

虫明亜呂無といっても、若い人はほとんど知らない名前だろう。 ペンネームではなく本名。1923年東京生まれ。1991年他界。スポーツ、競馬ギャンブル、旅、文芸批評とともに、映画・演劇についてもたくさんの文章を書いた文筆家だ。 若い頃は熱心に読んだ。最…