2ペンスの希望

映画言論活動中です

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

トリス「雨と子犬」

映画人がCFを作る例は昔から沢山あった。 サントリー トリス 雨と子犬 60秒 1981年 ACCグランプリ 1981年 カンヌ国際広告映画祭CM部門金賞 広告会社:サン・アド 企画・コピー:仲畑貴志(撮影当時34歳) 演出:市川崑(撮影当時65歳?) 撮影:宮川…

トヨタのネットCM

今日はCMつながり。といってもTV放映されたものではない。トヨタのインターネットCM。YouTubeで公開 1週間で175万回再生されたそうだ。 撮影は北九州・小倉駅前の魚町銀天街界隈。元巨人軍クロマティの姿も見える。 このCM 制作したのは、福岡…

コトバ<モノ<コト

東浩紀さんの本の感想三つ目。 「言葉より「モノ」にこだわりたい」とした小見出しの下に「言葉を使うと、人間はいくらでも議論を「メタ化」することができる。すると議論がずれて、なにがなんだかわからなくなる」とあった。 「言葉で真実を探さない」「言…

「観光客」ノススメ

東さんは、一所にとどまる「村人」ではなく、偶然に身をさらす「旅人」になれ、と説く。ディープなバックパッカーでなくてよい。自らのバンコク家族旅行を例に、高級ホテルに泊まり観光名所を巡り地元の名物料理を堪能する「観光客」でまずは十分、と語る。 「…

閉じたくない

東浩紀さんの『弱いつながり 検索ワードを探す旅』【2014年7月 刊】を読んだ。 幻冬舎のPR誌「星星峡」に連載したものを纏めた本だ。1971年生まれ。いつの頃からか、評論家・批評家という肩書きをはずし、作家・思想家と自称しているのも何だかな‥と敬遠し…

スタイル

「つげ義春の作品には、白土三平や手塚治虫の作品と同じ意味で思想はない。 つげの作風は、一つの思想体系を絵ときにするという方法から遠くはなれて、むしろ、形をつみかさねてゆくうちにうまれる音楽にある。音楽に思想があるかというのは、これもこたえに…

社会科学的な視点

昨日の続き。あとがきにこの本が生まれたきっかけが書かれていた。 広田照幸先生、編集者と飲んでいた席で酔っぱらってついグチをこぼしてしまった。 そのやりとり↓ 広田「教育学を勉強したい、教師になりたいといって大学に入学してくる学生に、社会科学的な…

事実の加工

ちょっとした用があって、広田照幸さんという教育社会学の先生らが書いた本『教育問題はなぜまちがって語られるのか?「わかったつもり」からの脱却』【日本図書センター2010年9月 刊】を読んでいる。 「教育問題」をめぐる議論がコースアウトしてしまわない…

大味

大味になっているような気がしてならない。濃い味、強い味、ハッキリそれだと分かるジャンクフードが人気だ。もっとも今に始まる話ではない。いつの時代にも過剰なもの、刺激的なものは好まれてきた。これまでにないもの、目新しいものに耳目は集まる。 それ…

外観だけちゃんとしている困り物

谷川雁の単行本未収載散文集『不知火海への手紙』【アーツアンドクラフツ2014年12月31日 刊】にこんなくだりがあった。 天然鮎と見紛う養殖物の巧妙の話。 「つまりニセモノがしだいに自分自身を改良し、ホンモノに近づこうとするのですが、外観がどんどんホ…

宮本常一の写真

今日は『宮本常一と写真』から写真を二点。 「山口県見島の宇津。一九六二年(昭和三七年)八月三〇日‥帽子を被った宮本の影。後ずさりして撮る余地がなかったのか、あるいは自らの姿を投影したかったのか」(石川直樹によるキャプション) 「大分県日出の「貸…

円い写真 浮力 読める写真

『宮本常一と写真』という本を読んだ。 書いたのは石川直樹さん 1977年生まれの写真家だ。 宮本常一は日本中を歩き、生涯240冊のファイルにのべ10万点近くの写真を撮った。 彼の写真について語る石川さんの言葉が印象的だった。幾つか挙げてみる。 「写真は言…

「贅沢産業」

「日本映画の衰亡は誰の目にももう見えている。いや、なくなるわけではなく、恐竜が滅亡しても爬虫類の蛇や蜥蜴のように残るが、矮小化しつつあるものに未練や拘りを持っても仕方がない。」 脚本家橋本忍さんの言葉だ。書いたのは1993年7月頃か。所収は、シナ…

『サウダーヂ』

2011年制作の映画『サウダーヂ』。作ったのは、山梨県甲府市を中心に活動する映画集団「空族」の富田克也さん。数日前に京都で観た。 「サウダーヂ」というのはポルトガル語で郷愁・憧憬・せつなさ‥を意味する言葉だそうだ。富田さんは「一言では言えない複雑な言…

「演技する動物」

「見られることを知り、表情や言葉や仕草によって様々な意思伝達が出来ることを知る 人間は、演技する動物なのである。その動物が撮影機という記録する鏡を前にしたとき、日常は演出されるのである。」(強調は引用者)永らく数多くのドキュメンタリー映画をプ…

痛み

昨日の続きで、キネ旬最新号(2015年4月下旬号)から。 数年前から続く中村高寛さんのコラム「黄金町ブルース フィルムに映らないドキュメンタリー監督の日々」を読んだ。 中国北京電影学院時代の恩師の言葉を紹介している。 「ドキュメンタリーとドラマの違…

映画本

キネマ旬報の最新号(2015年4月下旬号)を読んだ。といっても本屋の立ち読みだが。映画本大賞2014が載っている。 2014年1月から12月までに日本で出版された映画に関する本は700冊あまりに上るそうだが、関係者によってそのベスト・テンが選ばれている。(毎度…

つばなれ

寄席言葉で「お客さんが十人以上になること」を「つばなれ」と呼ぶ。 ひとつ、ふたつと数えていって、十:とおで「つ」がとれることに由来する。 そういうのばかり選んでるつもりじゃないのだが、客席が一桁というのが最近多い。ミニシアターではもちろん、た…

クレオール化

永らく言語学を専門とする友人から面白い話を聞いた。 異なる文明・文化圏の接触面では、お互いの意思疎通のために新たな言語が生まれる。この言語のことをピジン言語というのだそうだ。 混合言語(接触言語)。 例えば、現地人と貿易商のあいだで交わされる…

単純明快の罠

情報過多の中では、単純明快なキャラ設定や、強いエモーション(記号性とか具象性とか)の方が受けがいい。分別容易。分かりやすく誰もが像を浮かべやすいからだろう。 複雑で構造的な問題を突き詰めるのはしんどい。時間も掛かる。手っ取り早く見えやすい部…

もどき もがき

もどき まがい なまり くずれ もじり ‥‥ 一見 ソレっぽく ソレらしい、けど、どこか違う。なにか足りない。 コピー レプリカ フェイク イミテーション ‥‥デコイとか、バッタモンというのもある、○○チック‥なんてのも。 他にも、アレンジとか カヴァーとか リ…

Bad money ‥‥

エスタブリッシュメントが潰れることは歓迎する。(このことは何度も書いてきた。) 垂直的な序列の否定。だからといってメイン・カルチャーよりサブ・カルチャーの方がいいとかオルタナティブがかっこいい、と持ち上げられては適わない。アンチだからいいん…

イージー

価値あるとされたものが廃れ、そんなに良くないと思われてきたものが評価されていく。この傾向は、今に始まる話ではない。 「最近の若者はけしからん。俺たちの頃は‥‥」という文句が古代エジプトの遺跡から見つかったという話は知られている。大人が嘆く決ま…

「残念」

昨日のブログを書いて、少し前に読んだ「さやわか」(というペンネームのライター)さんの本『10年代文化論』 【星海社新書 2014.4.24 刊】のことを思い出した。 「残念」というキーワードから2010年代の文化潮流を読み解こうと試みた本だった…

すべり芸

不思議な映画体験をした。 主演の一人(すべり芸芸人)の芝居・台詞が棒読みでひどかった。目も当てられないのだが、映画としてはそれだから致命的ということでもなかった、むしろさわやか、後味も悪くなかった。へんな幸福感で見終えた。よく出来た映画だと…