2ペンスの希望

映画言論活動中です

コトバ<モノ<コト

東浩紀さんの本の感想三つ目。
「言葉より「モノ」にこだわりたい」とした小見出しの下に「言葉を使うと、人間はいくらでも議論を「メタ化」することができる。すると議論がずれて、なにがなんだかわからなくなる」とあった。
「言葉で真実を探さない」「言葉の解釈は現前たる「モノ」には及ばない」という項も。
けど、それって、「論より証拠」とどこか違うの?
「コトバよりモノ、モノよりコト=体験 それがタビだ」という主張も繰り返される。
どこかに行く、体をはこぶ、時間は複製できない、偶然に身を曝そう etc.
いわんとするところ 分からぬわけでもない。
けど、「人生 出会いだ」「百の空論よりひとつの体験」といった訓話とどこが違うの?
ロートルにはよく読みきれなかった。
ぼんやりと日産のミニバン「セレナ」のCMを思い出した。「モノより思い出」。
「priceless お金で買えない価値がある」なんてマスターカードのCMもあったよな。
このpriceless=もちろん無料という意味ではない。お金も時間もたっぷり掛かる代物。
お金や時間にあくせくする身としては、残念ながら東さんの言葉は身に沁みなかった。教えられることはあったが、得心しなかった。
そこでお口直し。最近読んで印象に残った言葉を最後にひとつ。
秋キノコを求めて山を巡る村人の言い伝え 「歩けばなにがしかの恵みがあるのです。そのことを人々は「山は恥かかせん」と表現します。」【谷川雁不知火海への手紙』2014年12月31日アーツアンドクラフツ刊 38ページ】
ふくよかでいいコトバだと思うが如何?