2ペンスの希望

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2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

紙ヒ逍遥 映画は人間語

今日も長部日出雄さんの「紙ヒコーキ通信」に誘われての逍遥・余滴を続ける。 「紙ヒコーキ通信」の単行本は三冊でている。これまでは通信2『映画監督になる法』を中心に引用してきたが、通信1の表題は、『映画は世界語』。そう言いたい気持はよく分かる。が…

紙ヒ8 文体礼賛 

ここ一週間長部日出雄さんの本・紙ヒコーキ通信をネタに綴ってきた。 気楽で深くてハマっている。 もういい加減にしろ、という向きもあろうが、別に急ぐ旅でもないので、今しばらく馬なりで行く。 今日は、こんな言葉。 「二流の小説が、よい映画になること…

紙ヒ7 多読家にして精読家

長部日出雄さんの「映画監督になる法」の結論。 T−映画がスポーツであって、しかもマジックであるとすれば、そこから明確に導き出されるひとつの結論があります。上達するのには、練習が必要だということです。練習せずに、プロの野球選手やマジシャンになれる…

紙ヒ6 続々・映画監督になる法

長部日出雄さんの「映画監督になる法」つづき。映画はスポーツです、が第一。第二は、映画はマジック・トリックです。 さらに、映画は美術です、と続く。 「カメラマン、美術家、衣装デザイナー、メークアップ・アーティスト‥その他たくさんのスタッフのアイデ…

紙ヒ5 続・映画監督になる法

昨日の答合わせ。 「T―映画は●●●●です。」 俊代陸斎先生は、太ゴシックで「映画はスポーツです。」と断言する。 T―映画はスポーツです。物の始まりが一なら国の始まりは大和の国、泥棒の元祖が石川五右衛門なら‥‥(以下延々と寅さんの啖呵が続き、そこに「映…

紙ヒ4 映画監督になる法

紙ヒ通信その四は、「映画監督になる法」。 雑誌掲載ではなく、単行本『紙ヒコーキ通信2』の書き下ろしだ。長部さんの映画の先生「俊代陸斎」との問答形式。「俊代陸斎」はトシヨ・リクサイと読む。 以下 T=俊代陸斎(映画の先生) B=僕(長部さんとおぼし…

紙ヒ3 映画・信仰・恋愛

紙ヒ通信その三は、「映画・信仰・恋愛」。 適宜抜粋しながら引用。 1 ずいぶん大げさな題だとおもうだろうね。 2 かねがね作品の批評において他人と食い違ったとき、小説ではそんなことがないのに、映画にかぎって反射的にカッとなるのは、なぜだろうとお…

紙ヒ2 ビデオ革命

無類の映画好き長部日出雄さんの「紙ヒコーキ通信」その二は、ビデオ論。 1981年8月6日付の「東京新聞」に掲載されたもの。三十二年前=1981年がどんな時代だったのか、一部抜粋しながら引用してみる。「ビデオに関して一九八一年は、次のような年…

紙ヒコーキ通信

紙ヒコーキ通信というのは、1980年代の十年間、作家・評論家の長部日出雄さんが書き綴ってきた映画についての個人通信だ。最初は雑誌「オール讀物」に掲載されたが、途中から直接講読制に切り替え、読者を募って続けられた。今ならさしずめメルマガだ。 …

つくづく

つくづく良い時代になったものだ。心からそう思う。 数日前にVHSで清水宏監督の『按摩と女』(1938年)を観た。 75年前に作られた映画を簡便自在に観ることが出来るようになった。 おったまげた。女優(高峰三枝子さんだ)の息を呑む美しさ、鄙びた(…

タイアップ

映画のタイアップは、昔から嫌というほどあった。タイアップにも時代が反映する。かつては化粧品や自動車、お酒やお菓子、粉ミルク、等々‥航空会社や観光地などが常連だった。娯楽映画だけではない。文芸大作も芸術祭参加作品も同列。あらゆる映画であらゆる…

温泉と銭湯

たまの温泉より毎日の銭湯、子供の頃からそう思ってやってきた。 当時育った町内には内風呂のある家は少なかった。代わりに歩いていける距離に銭湯は何軒もあった。それが今ではほとんど内湯に変わってしまった。学生下宿・ワンルームマンションもバス付が当…

巻物と帳簿

池澤夏樹さんの『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』という本を読んだ。 【2009年10月小学館刊】 聖書の逸話・専門用語については全く歯が立たずチンプンカンプンだった。ただ 「書かれた文字=テキストには二種類がある」という話は面白かった…

ずべ公番長

北原ミレイの若かりし頃。映画のゲスト出演。1971年 東映映画『ずべ公番長 ざんげの値打ちもない』監督さんは山口和彦。主演は大信田礼子。 映画の題名には「ざんげの値打ちもない」とあるが、唄っているのは「棄てるものがあるうちはいい」。「ざんげの…

ざんげの値打ちもない

今日は唄。 北原ミレイのデビュー作『ざんげの値打ちもない』作詞は阿久悠 作曲は村井邦彦。 発売当時は収録されなかった幻の四番をTVで初めて唄った版。いささか過剰演出が鼻に付くが、ご勘弁ねがう。 【NHK『歌謡コンサート〜阿久悠特集 歌よ時代を語れ』…

「Alone in the Zone」

今日は迷った末のアップロード。 「Alone in the Zone」 VICE Japan という「世界30カ国に支部を持つユース向けデジタルメディア」が配信している映像だ。昨日の「詩」のせいでもなかろうが、知人がメールで報せてくれた。「同じ境遇にいたら私も同じ行動…

「神隠しされた街」

今日も詩の話題。 若松丈太郎さんという方の詩「神隠しされた街」。未知だった。若い友人が教えてくれた。長いが全文を引く。「神隠しされた街」若松丈太郎【『悲歌』・連詩「かなしみの土地」より】四万五千の人びとが二時間のあいだに消えた サッカーゲー…

南部鉄瓶

今日は二つの詩を挙げてみる。「鉄瓶に寄せる歌」 お前は至って頑固で、無口であるが,真っ赤な炭火で尻を温められると、唄を歌い出す。ああ、その唄を聞きながら、厳しい冬の夜を過ごしたこと、幾歳だろう。だが、時代は更に厳しさを加えて来た。俺の茶の間…

鳥の背後

作家は鳥の目ですべてを見ている。観客は虫の目で一歩一歩リニアに進むしかない。よく言われる比喩だ。鳥の目、虫の目。 作家は、全体を見渡した上で、観客の理解の幅を見積もりながら、ときに揺さぶりときにエサを撒きながら語り続ける。その通りだろう。こ…

謎を書く人・解く人

たとえて言えば、「作家は謎を書く人」、「観客は謎を解く人」でしょうか。なのに「そんな謎解きたくもない」という時代、作家は「誰に向かって語るのか」という壁に向かわざるをえない。 大学の先輩からこんなメールを戴いた。 確かにマスが見えなくなった…

わかりやすい難解さ(続き)

例年のことだが、雑誌や新聞社が選ぶ年間映画ベストテンが出揃った。以前にも書いたが、ベストテンは無意味、むしろ百害あって一利なし、そう思っている。これだけ映画がインフレ化してくると尚更だ。(詳しくは繰り返さないが、偏った結果だけが一人歩きす…

わかりやすい難解さ

映画の若い友人から面白い言葉を聞いた。 「わかりやすい難解さ」 昔は、さっぱりわからないのに、とにかく熱くて火傷しそうになっても目が離せず惹きつけられてやまない映画があった。それに比べると最近の映画には火傷するほど熱い映画がとんと見当たらな…

やわでわや

スクリーンもあれば、モニター画面もある。スマホもある。 映画を見る環境は増えた。しかしそれは本当に良いことなのか。選択肢が増えることはそれほど良いことなのだろうか。観客・視聴者は増えたのか。むしろ逆ではないのか。観客は激減し監督が激増した。…

デジタルの功罪

デジタルの時代になって、メジャーもマイナーもなくなった。 有名人も無名人もみな横並び=フラット=平準化の海に漂うばかりだ。誰もが勝手気ままにブログったり、ツイッたり、ググッたりできる。(もっとも注目度には雲泥の差があるが‥)世界は開かれた。…

情緒的な言葉たち

情緒的な言葉がある。「心を痛める」「寄り添う」「向き合う」「触れ合う」「癒す」「気遣う」「思いやる」「きずな」‥‥商業新聞やお役所の広報などによく見られる言い回しだ。 悪い言葉ではない。口当たりも耳障りも良い。ただ、どこかしらに気色悪さも感じ…

アウトロー・サムライ嫌い

アウトローもサムライも嫌いだ。 アウトローについては「既成の社会秩序から踏み出す荒ぶる勇者」と賞賛するムキもある。そんな風潮に呉智英さんが異議を唱えている。【『吉本隆明という「共同幻想」』筑摩書房2012年12月10日刊11頁】 「(アウト…

ジャック・タチの性質

不勉強で、最近まで知らなかった。 JLGの映画『勝手にしやがれ』の原題は、『A BOUT DE SOUFLE』仏語で「息切れ」を意味するそうだ。『勝手にしやがれ』と名付けたのは秦早穂子さんだった。その昔「新外映」という会社で欧州映画の輸入配給を手掛けてきた草…

Aki Kaurismaki on Ozu

北欧フィンランドのアキ・カウリスマキさんが小津安二郎について語っている映像を 見つけた。忘れないように挙げておく。 Ozuだけじゃない。1930年代から1960年代にかけて日本の映画は世界水準だった。嘘じゃない。騙されたと思って過去の日本映画を…

維新派

「維新派」が好きだった。「日本維新派」と名乗っていた時代、そのもっと前の「舞台空間創造グループ」の頃からだからファン歴はかれこれ五十年近くにもなる。役者なら、藤野勲、白藤茜、池内琢磨、玉水町煙、高橋章代、‥‥、スタッフでは、初期の舞台美術=…

の・ようなもの

1981年『の・ようなもの』脚本・監督:森田芳光 撮影:渡部眞、二人ともにデビュー作、新人コンビだった。思い返せば、この頃からかも‥。映画でないのに映画のようなものがスクリーンに混じり始めたのは‥。ただ、この映画『の・ようなもの』は、よく出来た映…