2ペンスの希望

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わかりやすい難解さ(続き)

例年のことだが、雑誌や新聞社が選ぶ年間映画ベストテンが出揃った。以前にも書いたが、ベストテンは無意味、むしろ百害あって一利なし、そう思っている。これだけ映画がインフレ化してくると尚更だ。(詳しくは繰り返さないが、偏った結果だけが一人歩きする危うさはもっと指摘されてしかるべきだろう。)
それでも根がスケベーだから、どんな映画が選ばれているのか気になって覗き見する。そして驚いた。その後なるほどなと納得した。
映画を観るプロ・専門家を自認する批評家・評論家が選んだベストワン映画が、読者のベストテンでは選外、やっとこさ22位というランキングだった。(どの映画、どのベストテンかは、ご興味のある方は各自で心当たりに当たるべし)いわゆるクロウト受け・専門家好みというやつだ。アート系の芸術映画、深遠なテーマに挑んだ問題作・意欲作については、専門家としては一応目配せして選んでおかなくっちゃカッコがつかないよね、映画はブラボーというほどではないが、悪くはない、いやとてもよく出来ている。わかりやすいし‥そんな気分というか圧力が働いた結果のベストワンだろうか。
一方、観客の方はもっと正直だった。何時上映したのか知らないし、規模も小さく期間も短くて見逃してるし‥。観たけど、良心作であることは認めるが観て面白い映画ではなかったしなぁ‥。
「わかりやすい難解さ」が専門家には受け入れられ、観客には敬遠された結果だと「裏読み」してしまった。
クロウトの評論家もシロウトの観客も有無を言わさぬ迫力で串刺しするような映画はもはや望むべくもないのだろうか。