2ペンスの希望

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「往生し末世」

近所に新しい古本屋が出来た。
数日前『映画の見方が変わる本』【1989年9月別冊宝島100号】を購った。100円だった。帰宅して本棚を見たら同じ本が並んでいた。最近よくある話だ。全然驚かない。こだまひびきの漫才ではないが、「ボケとんねや〜」
本の中身もすっかり忘れていた。
冒頭に四方田犬彦の文章が載っていた。「若き映画評論家への手紙」。
無意味なベスト10選び、グルメ雑誌と化した映画批評誌‥映画評論家なんてバカばっかりだ!」と威勢がいい。さらに「映画評論家は誰でもできる。」とあって「映画評論家がバカだと思ってはいけない。バカが映画評論家になるのだ」となんともえげつない。
仮に発言内容が真実だとしても、四方田さんのこの品のない文章は見苦しい。
比べる訳ではないが(と言いつつ比べるのだが)
和田誠さんの『シネマ今昔問答望郷篇』にはこんな思い出話が載っている。
「昔の映画評論家には得意分野があった」という話である。引用する。
和田 テクニカルなことは岡俊雄さんがよく書いていましたね。それぞれ得意分野があって、ミュージカル、ジャズ、アニメーションなら野口久光さん、原作の外国文学のことなら植草甚一さんとか。双葉十三郎さんは演出の分析がユニークで、時には絵入りで解説してね、それだけじゃなくオールマイティでどんなジャンルにも強い。
――淀川長治さんは?
(←編集者の質問‥引用者註)
和田 淀川さんは当時は「映画の友」の編集長で、イメージとしては映画ファンが嵩じて映画の仕事にたずさわらなくてはいられなくなった人。評論家というより映画ミーハーの親玉みたいな(笑)子どものくせにそんなふうに思っていました。‥中略‥でもそのことを馬鹿にしたんじゃなくて、ぼくとしては身近な感じがしてたわけ。
どうだろう、この愛情の差。出来が違う。
こだまひびきなら さしずめ「四方田はん、アンタ、往生しまっせ〜」というところか。