2ペンスの希望

映画言論活動中です

2016-01-01から1年間の記事一覧

研究者:御園生涼子さんの本 

御園生涼子さんの本『映画の声 戦後日本映画と私たち』【みすず書房 2016年10月 刊】を読んだ。 久し振りに研究者の底力を感じた。優れた研究論文は、作者(オーサー、フィルムメーカー)の意図・意識・計算・作為(作意)を超えて、予期せざる深層にまで垂鉛(…

H/T

神戸三宮のシネコンで『ヒッチコック/トリュフォー』を観てきた。 神戸では一館のみの「独占上映」。公開第二週の土曜日の午後、152席に観客は9人だった。その前後に上映のアニメは若い人中心に結構な入りだったのに‥‥残念。 多分今年最後の予告編。前段…

漫画化計画 本

勧められて『長嶋有漫画化計画』を読んだ。【光文社2012.3.刊】 「ブルボン小林」名義で漫画評論も書く長嶋有さんが、自ら漫画雑誌の編集者となって自作の小説を15人に漫画化して貰った一冊。 特別参加の藤子不二雄Ⓐさんも含め、名前を知っていたり漫画を読…

岡田さんの本から5:補遺

岡田さんの本の拾い物。 エマニュエル・リヴァが『24時間の情事(Hiroshima mon amour)』のロケ中に6×6 リコーフレックスで撮った写真集『HOROSHIMA 1958』のことが書いてあったので、早速近くの図書館から借りだしてみた。 1958年の日本 屋外には子供た…

岡田さんの本から4

昨日岡田さんの本の中で一番率直で切ない一文を読んだ。 「小さな画面、大きな画面」。 岡田少年の映画との出会い・私的回想録、2007年5月太田出版発行の雑誌「d/SIGN」に載ったものだ。 人は与えられた時間と場所で今を生き、映画と出会う。1968年愛知県生…

岡田さんの本をテキストに3

引き続き岡田本をテキストに。 1) 岡田さんは「フィルムセンターの事業を説明する際にしばしば不遜にも「国立国会図書館の映画版」という言い方をしてしまう。」と書いている。「実は、法的には国立国会図書館法の第24条が映画フィルムの国立国会図書館…

岡田さんの本をテキストに2

岡田秀則 本『映画という《物体X》』の昨日読んだ一節。 「面白くない映画を我慢して見ることで人間は深みを増す、と書いたのは作家の田中小実昌である。映画鑑賞はとかく時間を食うが、人生は一度しかない。金を払ってつまらない映画を観ることは、できれ…

岡田さんの本をテキストに1

またまたしばらく間が空いた。諸般の事情もあるのだがネタに困ってるのも一因。 昨日からNFC国立近代美術館フィルムセンター主任研究員岡田秀則さんの本『映画という《物体X》』【立東舎 2016.9.23.刊】を読み始めている。 面識はない。 1968年生まれと…

Pillow Shot

久し振りにYouTubeを覘いてみた。世界のOZUについては。膨大な画像がアップされているが、中で目に付いたのを一つ挙げてみる。 “Pillow Shot”とは、「映画のストーリー進行のただなかに取り入れた、大抵は静止状態の、一見したところ偶然にそこにあるような…

「人間に対する教養」

残念ながら、押井守さんの映画はほとんど見たことがない。 けど、本は面白く何冊も読んできた。今日は『仕事に必要なことはすべて映画で学べる』【日経BP社 2013年10月 刊 電子書籍Kindle版もある】 映画に材を採って書かれた中間管理職向け「処世訓」ビジネ…

浦沢の本

浦沢直樹さんの本『描いて描いて描きまくる』【小学館2016年2月 刊】を読んだ。 小学館の若い担当編集者生川遥さんの12時間余り14万5千字インタビュー本だ。 原作者とのタッグなど、面白く読んだ。 今の漫画が雑誌編集者との“二人三脚”から生まれる(からしか…

全記録と謳うなら

申し訳ないが、ずっと前からキネマ旬報は本屋の立ち読みで済ますことが多くなった。買うことは滅多に無い。 というわけで、先日も最新号を立ち読みした。 原一男さんの塚本 本「『野火』全記録」の書評が載っていた。「身体性へのこだわり」「自主制作へのこ…

純粋純然PR

今日は純粋純然PR。 昨日11月5日から18日まで、大阪九条の映画館シネ・ヌーヴォで 「松本雄吉特集」というプログラムが組まれている。 詳しくは、「シネ・ヌーヴォ」でググってみて。 ドキュメンタリーや公演記録が大半だが、阪本順治や市川準、山本政志ら…

「100回見ても感動する映画」

よんどころない事情で、かなり間が空いてしまった。 久方ぶりの記事は、最近読んだ本の一節。これまで何度も取り上げてきた御贔屓ライター兼エディター都築響一さんの語り下ろし本『圏外編集者』 【朝日出版社2015年12月 刊】から。 「編集者を目指すからっ…

中古良品

赤瀬川原平さんは、タイトルネーミングとコピーライティングが達者だった。 老人力とかトマソンとか。 最近読んだのは、『健康半分』【株式会社デコ 2011年7月 刊】「病院の待合室に置く小冊子『からころ』に連載したもの。亡くなる三年程前、原平さん74歳時…

女優で見る

少し前に、女優さんで映画を見ることが少なくなって監督さんの名前で見ることが多いのは寂しいと嘆いた。それがこのところ女優さんマークの映画を三本立て続けに観た。藤山直美(57歳)、蒼井優(31歳)、大竹しのぶ(59歳)。 なんだ、 S監督(57歳)、Y監督(40歳…

雄吉

維新派の松本雄吉さんが亡くなって三か月が過ぎた。 十月の秋公演も維新派は変わらず人気のようだ。前売りチケットは完売。 雄吉逝っても維新派は続く。人は死んでも歴史は残る。 日本が、日本の演劇が続くように‥‥。 長谷川町子が死んでもサザエさんは続く…

糸 英訳 仕合わせ

中島みゆきの楽曲『糸』はファンが多い。 多くのシンガーがカバーし、CMにも使われてきた。数日前、伊藤由希子さんという実践女子大学の研究者(倫理学・日本思想専攻)の論考:「仕合わせ」という「しあわせ」―中島みゆき『糸』をめぐって を読んだ。【雑…

健吾×ショコタン

先回から半月以上間が空いた。何もしていなかったわけではないが、何かあったわけでもない。いずれにしろ、大したことはしていない。以前テレビ番組『浦沢直樹の漫勉』で観た「花沢健吾」の回が面白かったので、「文藝別冊[総特集]花沢健吾ヒーローなき世界…

ショウジ君

現存のエッセイストNo1.は誰だろう、という話になった。 いの一番に名が挙がったのは、東海林さだおさんだ。 異議なぁ〜し。 他の追随を許さない抜群の観察力、文字と画に落とし込む巧みな表現力。 同じ国、同じ時代に生きていることをこれほど感謝させる人…

写真:一瞬の出会い勝負

暑すぎるので、写真集ばかり眺めている。映画は持続力を要求する。写真は一瞬の 出会い勝負だ。 大辻清司:1923年生まれ。 木股忠明:戦後の寅年生まれ。 初沢亜利:1973年生まれ。 ぅん? 誰に惹かれるかって? ほぼ同世代で、脳梗塞を患ったこともあるらし…

ドス訳比較

字幕屋太田直子さんは、中二のときに『罪と罰』にはまって以来筋金入り、知る人ぞ知る ドストエフスキー・フリーク。『ひらけ! ドスワールド―人生の常備薬 ドストエフスキーのススメ』という本も出している。【2013年 AC BOOKS】 その中こんな一節が…

字幕屋というプロ

知らなかった。 字幕屋の太田直子さんが、今年(2016年)1月に亡くなっていた。本が出たら必ず読むという数少ない書き手の一人だった。 最新刊『字幕屋の気になる日本語』【2016年7月 新日本出版社刊】のあとがき(星野智幸さん)で知った。享年五十六歳。まだ…

ガラじゃない

京都でダリ展を二つはしごしてきた。1928年ダリがブニュエルと一緒に『アンダルシアの犬』を作ったことは有名だが、ディズニーとのコラボは知らなかった。2003年に発表された『デスティーノ』 そもそも最初のコラボ企画は1946年だったらしい。 …

ヨイショ雑誌

真偽のほどは知らないが、エディター都築響一さんがこんなことを書いていた。 「「飲んでるときは批判や悪口で盛り上がるのに、つくる誌面のほうは批判ゼロのヨイショ・ページばかり」の三大雑誌ジャンルが建築・ファッション・音楽だ。」【「ROADSIDE BOOKS…

すぐ書いて、すぐ読んで、すぐ次に行く

原稿用紙を見たことも使ったこともない小学生が増えているそうだ。プロの物書きでも今 手書きで原稿を書く人はどれくらいいるのだろうか? 「作家になる前に一本だけ手書きの原稿がありますけど、それ以外は全部ワープロ。ワープロがなかったら、作家になっ…

怪演(≒快演) 迫演

女優さんで見る映画より、監督さんの名前で見ることの方が増えている。情けない話だ。週末、ちょっと前に公開され見逃した映画や気が重くて敬遠してきた映画をDVDで何本も借りて観た。大半は想定内のアチャーだったが、へ―という女優さんがワンシーンだけ…

写真・写真家・映画

今日は久しぶりに、予告編。 若い知人から教えて貰った写真家ロバート・フランクの ドキュメンタリー映画。御年91歳。スイス出身米国在住。その目でアメリカ人を撮った“THE AMERICANS”(1958)は昔見たことがあった。星条旗やマイノリティを捉えたショットが巧…

映画と同じくらい本も好きだ。 本というより、活字。活字というより文字。文字というより紙。紙というよりインク(の匂い)。さらに紙魚も帙も。 ということで(何が?とのツッコミは今回無しでお願いします) 2016年春からTBS系列で放送されたドラマ「…

背反有理2016夏その2

岡山県真庭市勝山で2012年冬からパン屋を始めた渡邉格さんの『腐る経済』を読んでいる。【講談社 2013年9月 刊】 「「腐らない」という現象は、自然の摂理に反している。 それなのにけっして腐らずにむしろどんどん増え続けるもの。それがおカネ。そのおカネ…