2ペンスの希望

映画言論活動中です

2016-01-01から1年間の記事一覧

背反有理2016夏その1

ちょっとした訳ありで、「青少年読書感想文全国コンクール」の2016年夏の課題図書『さかさ町』(小学校中学年の部 岩波書店 2015年12月初版)を読んだ。 いかにも岩波書店ごのみの「ちょっと ひねった文明社会批判」臭が気になるが、得点が少ない方が勝つ「…

リアル・本当のこと

数日前から、里山社刊行の『日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家佐藤真の哲学』という本を読んでいる。 佐藤真の本というより、奥さんをはじめ周囲の人々・縁のあった人々のエピソードが語られ、佐藤の肉声・体温・眼の高さが伝わってきて タノシ…

特効万能薬

若い人はすぐに使えそうなものばかり欲しがる。 トレースできるテンプレとか、はめ込み式フローチャートとか、とか。 巷には、便利グッズ、直ぐ役に立つスグレものが溢れかえる。 しかしだ。この世には特効薬も万能薬もない。未来永劫ないとまでは言わないが…

脚本 3?4?5?7?

フィクション・ノンフィクションに拘わらず、ドラマ形式としては、 序破急の三段構成や起承転結の四段構成がよく知られる。 昨日も書いた三宅隆太さんの『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』【2015年7月 新書館 刊】には、「発端・葛藤・危機・クライマ…

脚本 3つのキイ

昨日ちらっと書いた三宅隆太さんの『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』に高校生時代のエピソードが載っていた。将来映画監督になりたいと決めていた三宅君は、当時来日中だったオリバー・ストーン監督に会おうとアポなしで業界パーティーに潜入する。…

ここまで来てる

久しぶりに都心の大型書店を覘いてみた。 相変わらず映画本の新刊書がたくさん並んでいた。最近、映画本体の方は碌な新作にお目に掛からないのだが、幾つか目に留まった。 一冊は、若い映画研究者のための文献案内。『日本映画研究へのガイドブック Research…

『魔女 WITCHES』

以前『海獣の子供』を読んで面白かった漫画家 五十嵐大介さんの旧作『魔女 WITCHES』を読んだ。【小学館IKKI COMIX 2004〜2005年】印象的だったシーンを備忘録風に綴っておく。 第2集から[PETRA GENITALIX](タイトルは、生殖の石を意味するギリシャ語から…

「労働映画百選」

ちょっと前、東京に住む先輩から「日本の労働映画百選」という冊子を頂戴した。 劇映画、記録映画というジャンル、映画・テレビという枠を超えて、日本の労働にまつわる映画百本が選ばれている。19世紀末リュミエール社の派遣キャメラマンによる「明治の日本…

手で作る 「蟻鱒鳶ル」縁起

さらに昨日の続き。岡さんの自力建設ビル、三日目。今日のポイントは、手で作る。 「土工をやって、鳶をやって、鉄筋屋やって、型枠大工をやってと1個1個、順番に攻めて」今に至る岡さんは「手で作る人」だ。(最近は、色んなものを口で作ったり、頭で作っ…

コンクリート建築

昨日の続き。岡さんの自力建設ビルの話。お題は、コンクリート建築。 引用は、いずれも雑誌『熱風』連載記事「大工の棟梁中村武司の木造建築造りの仲間たち 8」(2016年6月号) 中村武司さんの言葉から。 (管理人の責任判断で、一部割愛したり、言い…

セルフビルダー

東京都港区三田聖坂。大型マンションに挟まれた12坪の敷地に、地下1階、地上3階、全体で4階層のコンクリートビルが建設中だ。 着工は2005年11月、11年を超えた今も建築作業は続いている。 作っているのは、岡啓輔さん(1965年福岡生)。新聞…

モリムラ展

森村泰昌の展覧会最終日に行ってきた。 そう、30年間様々な画家に扮してなりきり写真を自撮りしてきたあのアーティストだ。 正直半信半疑だった。「私を消したいわたし」という屈折した自己顕示欲に付き合わされるのはなんだかなぁ〜。 どんだけ自分が好き…

背反有理2016水無月

棚卸しをもうひとつ。 背反有理2016水無月。「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」 「何も起きていない現実が世界中で起きている」 岸政彦 『断片的なものの社会学』(2015年5月)「何もかも、これからさ」 「何もかも、とっくにはじまっ…

編曲家つづき

編曲家:萩田光雄さん。手掛けた編曲は4000曲を超えるそうだ。 代表作の一つ。山口百恵の「曼珠沙華」【1978年12月21日CBSソニーよりリリース】 冒頭のナレーション、阿木燿子さんの詩はいささか時代がかって好き嫌いが分かれそうだが、イントロのアコーステ…

編曲家

音楽は、若い頃からからっきし駄目だった。聴くのはキライじゃないが、譜面は読めないし、楽器も弾けない。 (何、けっこう三味線も弾くし法螺も吹くじゃないか、なんて冗談は無しでお願いする。) 最近勧められて読んだ一冊『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニュ…

勿体陳列半完成品映画

ほぼひと月ぶりの更新。相変わらずのペースで映画は観ている。 一カ月足らずで一五本。新作もあれば、戦前の旧作も。邦画も洋画も。劇映画も記録映画も。当たり前だが、感心したのもアチャーな映画もある。 昨夜は神戸のミニシアターに出掛け、封切りで見逃…

ややや‥おやすみ

ちょっとした事情有りで、暫く当ブログの更新が滞ることになりそう。 昔大好きだった吉行淳之介のエッセイ集に『やややのはなし』というのがありましたね。 ウロ憶えで書くのだが、ややや‥というのは大相撲の休業の印であるとともに驚きをあらわすやややでも…

越境性

映画は言葉の壁を超える、と言われる。半分正しく半分は違う。 映画の越境性。 言葉の壁は越えられても、文化の壁は容易には越えられない。 歴史も文化も政治も宗教も習俗も生活もみな違う。バックグラウンドからフォアグラウンドまで同じではない。 言葉だ…

「もはやそこにないもの」の現前

四方田犬彦さんの本『映画史への招待』に、こんな一節がある。 「(映画は)過去のある時点において制作され、配給され、上映されている。そこには それが撮影された当時の事物と人物が描かれている。だが、それは同時に、今ここで生きるわれわれにとっては…

ニューよりフリー

新しいことはそんなにいいことか、新しいものほど直ぐ古くなる。そうではなかろうか。 映画120年、音が付き色が付き、拡がりと奥行きを得て映画は進歩・進化したのだろうか?そんな疑問が沸く。 装備アクセサリーが整うにつれて、動きは鈍くなり、視野は…

引用集

昨日の四方田犬彦さん『映画史への招待』の第Ⅲ部は「引用集1895-1998」映画に まつわる言葉が年代順に百余り並んでいる。 頁稼ぎ=水増しのきらい無きにしも非ず だが、まぁ固いことは言わず幾つか引用してみる。 いかにも‥というのも多いが、おやっと思うの…

四方田犬彦『映画史への招待』

少し前、新しい「世界映画史を」と書いたのを読んで若い知人から「四方田犬彦さんの『映画史への招待』は読みましたか」とメールを頂戴した。不勉強で読んでいなかったので早速近くの図書館にリクエストして読み始めた。1998年4月岩波書店刊。 当時明治…

撮影と編集

監督には二種類ある。撮影の現場が好きな監督さんと編集作業が好きな監督さん。 撮影現場はムカデ競争の際たるものだ。スタッフ・キャスト皆の呼吸・息がぴったり合わなければ撮影は前に進まない。昔のように撮影所の中に手間暇かけたセットを組んで思い通り…

ムカデ競走

最近は二人三脚程度の軽装備競技化しているきらいもあるが、 映画は基本“ムカデ競走”である。 翻ってテレビの番組づくりは、400mバトンリレー。個人プレーの積み重ね。管理人の経験ではそうだ。 編成枠に則って、リサーチャー構成作家放送作家が企画を練…

大河 複々線 卍巴 キメラ

映画は多面体、どこまでも雑なるもののコンプレックスである。 商品と作品、娯楽と芸術の同居、伝統的な型・話法の練り上げとそこからの逸脱=型破りへの期待、その背理と混淆の果てしないせめぎ合い。 線:リニアではなく、面:スクエアとしての映画史を考…

面としての映画史

時間の経過・推移を踏まえた記述ということになると、どうしても線的な歴史になることは、或る程度はやむを得ないことなのだろう。リニアの映画史。日本史、世界史の別があるように、日本映画史、世界映画史、それぞれの地域・国に則した発展・進化、栄枯盛…

映画史更新

「観る手段や方法」がこれだけ多様化しているのに、この数十年新しい「映画史」は登場していない。畏れ多いのか、手に余るのか、商売にならないのか、誰も手を出さない。 もっとも、この数十年新しい映画が登場していない、歴史に記すべき映画は見当たらない…

ボンクラ魂

杉作J太郎さんの『ボンクラ映画魂 完全版 燃える男優(オトコ)列伝』【徳間書店2016年2月 刊 底本は1996年洋泉社『ボンクラ魂 三角マークの男優(オトコ)たち』】を 読んでいる。 後書きにこうあった。 「ボンクラ魂というのは、はらわたの底に燃える炎であ…

ビミョー

内藤篤さんの『円山町瀬戸際日誌 名画座シネマヴェーラ渋谷の10年』を読み終えた。ゆっくり読んだのは、かならずしも感心したからではない。後半は明らかに失速気味、 テンションも落ちている。それでも、普段よくお世話になっている名画座運営の舞台裏・台…

マニア

マニアなんてものは、そもそもがバランスを欠いた存在だ。 どんなマニアも健全だがビョーキ、常に行き過ぎている、そう思ってきた。懲りない一面と一途な学習能力を併せ持つ人々の群れ。精進一徹。(一徹精進?どっちだっていい。どうせ今思いついただけの、…