2ペンスの希望

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ここまで来てる

久しぶりに都心の大型書店を覘いてみた。
相変わらず映画本の新刊書がたくさん並んでいた。最近、映画本体の方は碌な新作にお目に掛からないのだが、幾つか目に留まった。
一冊は、若い映画研究者のための文献案内。『日本映画研究へのガイドブック Research Guide to Japanese Film Studies』 書いたのは、阿部マーク・ノーネスさんとアーロン・ジェローさん。ともに著名な海外の日本映画研究者だ。管理人でも名前程度は知っている。ノーネスさんはミシガン大学教授・アジア映画専攻、アーロン・ジェロ―さんはイエール大学教授。映画学プログラムと東アジア言語・文学科 兼務。ジェロ―さんは“Tangemania”という日本語のホームページも運営している。(Tangeは勿論丹下左膳にちなむ)昔々日本映画研究で知られたドナルド・リチーさんの後裔たちだ。
原著は2009年英語で書かれ出版されている。海外の日本映画研究者の間ではレファレンスブックの必携書として重宝されているようだ。パラパラ立ち読みしてみたが、確かに丁寧、充実している。それにしても、海外で日本映画研究が盛んで、その教科書が本国日本で出版され、このところ急増している日本の若い映画研究学徒たちに供される。時代はここまで来ているのだ。
二冊目は、三宅隆太さんの『スクリプトドクターの脚本教室 中級篇』。
三宅さんは、若松プロダクションの助監督出身。スクリプトドクターというのは、ハリウッドでは当たり前の「脚本のお医者さん」のことだ。1年前に「初級篇」が出ている。それなりに好評で需要moあるのだろう、今回めでたく「中級篇」が出版された。「上級篇」も準備中とのことだ。三宅さんは東京藝術大学大学院や映画美学校などで教えている。
実は、少し前 地元の図書館で借りて「初級篇」は読んでいた。映画の教則本は殆どがトホホ本、ガッカリ絶望することが多いのだが、この三宅本初級篇は、内容充実、実践的で良く出来ていた。特に、高校生やシナリオを書き始めてまもない若い人の入門書・テキストとしておススメだ。そう思った。最近一人で映画を作る人、一人で脚本を書く人が増えている。けれど、映画は一から十まで共同作業の産物。脚本だって一人で書くのではなく、疲れたり弱ったりこじらせたり迷子になったら、「脚本のお医者さん」に診て貰う方が良いに決まってる。シナリオライタースクリプトドクター。洋画では、ナラティブとかダイアログとクレジットされるセリフだけを担当する専門ライターも居る。
三冊目は、小林信彦さんの新作。中原弓彦名義も含め、昔はたくさん読んだが、或る時からぱったり読まなくなった。長く続く週刊文春連載コラム「本音を申せば」があまりにも古臭く老害に感じてしまったからだ。新作単行本タイトルは『古い洋画と新しい邦画と』。比較的新しめの「本音を申せば」連載を纏めたものだそうだ。願わくば、昔は良かったという回春・回顧談でないことを‥。読みもしないで失礼千万だが。管理人の感覚では、最近の映画状況は「外国映画は日々新しく、日本映画はますます古臭い」劣化コピーだらけということになるのだが‥。
まあ、この三冊 いずれも機会があればちゃんと読んでみよう。