2ペンスの希望

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長編記録・映画=本

相変わらず、映画本コーナーに行くと、映画関連の新刊本がズラリと並んでいる。お手軽・気軽なやっつけ仕事から手間暇かけた篤実労作まであるのは、映画本体と同じことだ。そんな中、通読オススメ本を一冊。『映画監督・神代辰巳』【2019年10月25日 国書刊行会 刊】

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B5判 704頁 定価12,000円+消費税10%=13,200円。

1970年代から80年代にかけて、撮影所だけでなく、日本国内で多少でも映画づくりの現場を経験し、映画に何がしかの興味を抱いている方には、ひろく「通読」をお薦めする。

きっと、あちらこちらに思う当たるフシがあり、身につまされるコトに出会う筈だ。少なくとも管理人にはそうだった。(アラフォー以降までもにはとても責任は負えないが‥つまりは1990年代になって初めて映画と出会った世代には、昔話・夢物語に映るかもしれないが)

国書刊行会編集部 樽本周馬さんの編集の執念、いや成果(精華)・「賜物」だろう。

トップシーンからエンドタイトルまで、よく練られた構成・展開で澱みなく読ませる。長時間の記録映画を見せられたようなうねり・流れを感じた。追悼礼賛祝詞本とは異なるナマ・リアルの毒・赤裸々もまぶされた小気味よい造りだ。執筆者135名それぞれの文章から人格・品性までがあぶり出されてくる。

ん? 読みすぎ・褒め過ぎ?そう思われる御仁は是非現物にあたられたい。(映画の現場の野放図さ・図太さ・どうしようもなさ‥やるせなさが伝わってきて切ない。それにしても、実作者・役者やスタッフ;脚本家に比べ評論家・映画記者・研究者諸氏の骨の細さ、肉の薄さは救いがたい‥‥いけないイケナイ、いつもの愚痴と無いものねだりの悪い癖が始まった‥‥退散・擱筆