2ペンスの希望

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九楊:正論不徳?

いささか訳ありで、石川九楊さんの本を立て続けに読んでいる。膨大な著作は四半世紀前からとびとびに読んできたが、今回は五冊。『石川九楊の行書入門 石川メソッドで30日基本完全マスター』【2010.11 芸術新聞社】石川九楊のほんとうに書がわかる九つの法則 書通九則 書ほど楽しいものはない』 【2019.7 芸術新聞社】河東碧梧桐 表現の永続革命』【2019.9 文藝春秋『俳句の臨界』【2022.2 左右社】『悪筆論』【2013.12 芸術新聞社 】いずれも九楊節、全開。余人を以っては代え難い技芸を発揮して飽きさせない。今日は最新作から 少々。

昭和の文学者十一人の書(の書きぶり)を俎上に、各人の文学(の核)に迫る九楊流の文学論考。表紙の背景を飾るのは中上健次の自筆原稿。副題「一枚の書は何を物語るか-書体と文体」の文字が白く浮かぶ。さらに 扉には 谷川雁のペン書き自筆詩集文字、久保田万太郎の色紙などが並び、ファン垂涎、サービス精神満載の一冊。

納得度100%、溜飲度100%、喝采度100%、と三拍子揃って、お見事としか言えない。舌を巻く芸達者。(全くの余談だが「八木俊樹」「東一条 春琴堂」「ナカニシヤ」‥‥懐かしい名前が幾つも出てくる。)

それにしても、だ。

映画批評の蓮實センセーといい、書の九楊さんといい、正論、マット―に本当のことしか言ってないようなのに、読後 気持ちよく癒やされないのは何故だか不思議。いや なに 御両人のオラオラ調に徳が感じられないのは心根の卑しい拙管理人=オラ一人だけなのかも....…知らんけど。