2ペンスの希望

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本『黄昏映画館 わが日本映画誌』

上野昂志 著『黄昏映画館 わが日本映画誌 』を読み始めた。【2022.6.25. 国書刊行会 刊】九八四頁 七千七百円。

伊藤大輔から濱口竜介まで四五名の監督名が並ぶ。ただしご本人の「あとがき」にはこうある。

監督論ではない。それに近いものもあるが、本人の意識としては、あくまでそれぞれの作品に触発されて書いたのだ‥」

上野昂志さんは1941年の生まれだから、拙管理人より一世代年長さんだが、辿ってきた映画遍歴は似ている。

一九八〇年代半ばから一九九〇年代 青土社「シネアスト」や漫画誌「ガロ」に書いた文にはこんなくだりもある。

わたしのようなプログラム・ピクチャー育ちにとっては‥‥

実際、看板やらポスターやら新聞広告やらを眺めて一人で映画館に入るようになった中学生の頃、わたしはいったいどれだけの監督の名を知っていただろう。黒澤、溝口、小津、木下‥‥といったところは確かに知っていたという記憶があるが、マキノについては曖昧だ。伊藤や内田はどうだっただろう、やはり曖昧だったという感じがする。わたしは、ポスターや看板に描かれてある題名や、俳優や惹句の印象によって、あるいは次週の予告編によって、つまりはカンで選んで映画館に入っていたのであり、そのなかに、マキノや伊藤や内田の映画があり、ウォルシュやホークスの映画があったのである。

これまでおもしろいということにこだわってきた。それも、何々が故におもしろいという方向ではなく、おもしろいと感じることそれ自体にこだわって書いてきたのだ。いってみれば、斯く斯くしかじかだから、というような理由に遡行するよりも一瞬早く現前しているところのおもしろさそれ自体、あるいは、様々の意味づけによって粉飾されるよりも一歩手前に起っているところの、おもしろいという感性の反応それ自体を生けどりにしようとしてきたのである。(太字強調は引用者)

そうだよな。アタマより先にカラダが動く・反応するんだよな。ミンナ そうやって映画に出会い。映画にハマってきたんだよな。