2ペンスの希望

映画言論活動中です

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『歩く、見る、待つ』ペドロ・コスタ ②

ペドロ・コスタの本『歩く、見る、待つ』続き。 「映画においては、見せるということと同様に、見せないこと、隠すことが大切な場合があり、おそらく、映画とはあなた方のものごとに対する視線、視覚を一点に集めるものなのです。」 「映画とは、余剰やイン…

『歩く、見る、待つ』ペドロ・コスタ

ペドロ・コスタの『歩く、見る、待つ』【2018.5.25.ソリレス書店 刊】を読んでいる。 2004~2010年にかけて日本の映画美学校や東京造形大学などで行った特別講義を書き起こした本だ。残念ながらコスタの映画は未見。だが、真摯な姿勢は伝わってくる。 映画を…

CALPIS CM by KUROSAWA

今日もYouTubeで御機嫌伺い。 些事でカルピスについて調べていたら、こんなのを見つけた。1997年カルピス発売80周年を記念して作られた黒澤明監督初制作CM「初恋」 www.youtube.com 自筆の絵コンテを、デジタルコンピューターグラフィックスでアニメーション…

『La Macchina Ammazzacattivi:殺人カメラ』

今日は久しぶりにYouTubeから。 イタリア、R.ロッセリーニ監督の『La Macchina Ammazzacattivi:殺人カメラ』(1952) www.youtube.com YouTubeの解説にはこうある。 「prologo realizzato dal padre di Mario Bava per la commedia fantastica La Macchina…

伝道師 女衒

淀川長治さんが資生堂の福原義春さんと対談した『僕は映画の伝道師』という本がある。【「サクセスフルエイジング対談」シリーズ 1997.7.11. 求龍堂 刊】 なかにこんなくだりがある。「映画の番頭さんみたいなつもり。映画の伝道師、それから映画の奴隷、そ…

"観客"という言葉

思えば映画にとって"観客"という言葉は少しそぐわなくなっているような気がする。映画館に足を運んで身銭を切って映画を楽しむ"観客"だけの時代はとうに過ぎている。TV放映、パッケージ・レンタル、ネット配信(VDOからサブスクリプションまで)を"観客"と一…

沈黙と空白

Web. remote online ‥‥ ネット通信はどう言おうと所詮「部分」の切り取りの世界だ。 たどたどしくzoom meeting やLINEのグループビデオ通話なんてのに参加してはいるのだが‥ 残念ながら旧石器時代のロートルには馴染まない。軽便・便利は認めるが、全体丸ご…

求心か遠心か

「映画は求心的であるべきか、遠心的であるべきか、どちらなんですかネ」若い人からこんな質問を受けた。う~ん 難問だった。しばらく絶句してから こう答えた。「両方大事」 ともすれば「求心」は独断専行になる。閉じて冷たく映る。「遠心」はベクトルが開…

最新より最深

「細心にして大胆たれ」は渋沢栄一、「大胆さと細心さを併せ持つべし」は盛和塾稲盛和夫、いずれも経営の心得としてよく言われてきた言葉だ。加えて「先んずれば人を制す」先にことを行えば有利になる、先手必勝とも。確かに経営・経済の世界ではそうだろう…

多様性

近年、ダイバーシティという言葉をよく見かける。多様性と訳される。昔はバラエティと言っていたよなぁ、と思ってたら、英語の出来る知人がこんな風に説明してくれた。"veriety"は「同じ種類の中の違い」を表す言葉で、”diversity”は「そもそも種類が違うこ…

月食 movie

知人から昨夜の月食の合成写真が送られてきた。 一枚の写真の中に時間を封じ込めた、まさに「映画=movie」 地球の影がくっきり見えて美しく見事、座布団一枚。 色んな想像が湧いてくる。

何を今更と言わずに

〝映画とは何か〟なんて言い出せば、何を今更ダサイことを、と笑われてしまうかもしれないが‥もしかしたら、もう一度あらためて一から〝映画とは何か〟を白紙で考える時期に来てるんじゃないか、最近そんな思いに駆られて仕方ない。 1895年のリュミエール兄…

丹精込めて端正に

イマドキのカメラは性能が良すぎて、レンズを向ければ写ってしまう。「わたしにもうつせますぅ 」ってか。 1965年(昭和40年) www.youtube.com でもって、粗雑で粗末な映画(もどき)が山ほど出来てしまう。 だからこそ、それ故に、丹精込めて端正に作られた…

缶蹴り

缶蹴りが好きだった。 知らない人は、上の絵を眺めながら適当にググッて学習してくれ。「けいどろ」よりずっと駆け引きアリでエキサイティング、そう思っている。 缶蹴りについては、遥か昔 きたやまおさむさんが「人生は缶ケリみたいなもの。 或る時誰かが…

エエ目 と エライ目

いささかならず大げさだが、人類の歴史はすべからく「ラクしてエエ目に合う」ためにありとあらゆる努力を重ねて来た歴史ではなかろうか。 蒸気機関の発明から家庭電化、コンピュータまで。集団・組織・企業・社会・国家‥徒党を組むコト、規則 規律 法律‥‥さ…

風と空気

かつて「KY=空気が読めない」という言葉が盛んに云われ非難されたことがあった。場の秩序を乱す不心得者、嫌われ排除されるべき迷惑者というわけだ。和を尊び同質性指向が強い日本社会のあらわれなどと文化論として語られたりもした。組織風土や社会風潮、空…

芸術と芸能

芸術と芸能の違いは何ですか? そう訊かれたらあなたはどう答えるでしょう。 劇作・演出家の鴻上尚史さんはこう答えています。 「芸術は『あなたの人生はそれでいいのか?』と挑発するものであり、芸能は『あなたの人生はそれでいいのですよ』と肯定するもの…

MV「カナリヤ」

教えられて米津玄師『カナリヤ』のMVを見た。 是枝演出、田中泯 蒔田彩珠といった名のある出演者が登場する。紹介記事には「コロナ禍の日常を生きる三世代の男女を描いた短編映画のような仕上がりの作品」とあった。 www.youtube.com 御大層なわりにはまった…

森達也『池袋シネマ青春譜』

『池袋シネマ青春譜』という森達也の半自伝的小説を読んだ。【2004.3.20 柏書房 刊】四十代半ばに差し掛かった森が二十数年前の自分を小説に編んでいる。 ムーミン谷の青春の悶々。人魚姫が空を飛び、黒犬が振り返る表紙画は鈴木翁二だった。立教大学の映画…

与太本

小学館新書『映画評論家への逆襲』を読んだ。「コロナ禍で苦戦する全国のミニシアターを応援すべく、映画脚本家・監督らが行なったオンライントークショー」を書き起こした安直・お手軽本だ。ハッキリ言って、「看板に偽りあり」にわか仕込みの与太本にしか…

細心 砕身

やっぱり映画は怖い。 細部のささやかなディテールまで見逃さず見抜く人が必ずどこかにいる。(たとえば、《或る時代設定の映画で背景にチラッと映り込んだ公衆電話に「当時はあの型式は未だ無かった筈」》《あの女優さんの運転中のハンドルを持つ手が気にな…

しっくりいくまで

短く明快な言葉は疑ってかかったほうがイイ、そう思ってやってきた。紋切り型・常套句・定型句は明快で強い。けど、一度は眉に唾してみることだ。そんなに単純でいいのかい、と。 哲学者 古田徹也は、ナチスに抗して雑誌『炬火』を発行し続けたオーストリア…

あまりにも初歩的

あまりにも初歩的でビックリした。 映画.comというウエブサイトで、トークイベント「海外に映画を伝えるには」の記事を読んだ。 11月2日第34回東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターが共同で開いた催しの配信だ。 PFFの荒木啓子ディレクターがリードし…

「観音が女王を書いた本」から脱輪

花房観音の『京都に女王と呼ばれる作家がいた』【2020.07.26. 西日本出版社 刊】を読んだ。売れっ子でもなく人気もない、吹けば飛ぶような立場のいち作家である私(=花房観音)が、大物ベストセラー作家(=山村美紗)の「タブー」にふれて書いた本だ。本筋とは…

森達也『私的邦画論』から その5

Newsweek 日本版 2020.11.06. 「映画は補助線を提供してくれる」 大切なのは知ること。知って自分で考えること。そして映画は一人一人の思考や煩悶に、とても重要な補助線を提供してくれる。 Newsweek 日本版 2020.11.12. 「普通な日常は、時として酷薄」 人…

森達也『私的邦画論』から その4

Newsweek 日本版 2021.05.20 「映画とテレビは大違い②」 今でこそテレビで放送されたドキュメンタリーを再編集して劇場で上映することは珍しくないが、東海テレビはいわばその先陣だった。 特に組員たちの仕事や日常が一切モザイクなしで映し出される『ヤク…

森達也『私的邦画論』から その3

Newsweek 日本版 2021.03.23. 「映画とテレビは大違い② 森達也vs原一男」 2002年頃だったと思うが、原一男監督に初めて会った。場所は渋谷のNHKの会議室。番組出演ではない。NHKの労働組合である日本放送労働組合から、公開で対談を依頼されたのだ。 原が『…

森達也『私的邦画論』から その2

Newsweek 日本版 2021.09.08 号「ドキュメンタリーとフィクションは全く違う」 黒木和雄監督に初めて会ったのは2002年。東京のミニシアターであるBOX東中野(現在はポレポレ東中野)で、『竜馬暗殺』上映後に行われたトークショーだった。黒木以外に是枝裕和…

森達也『私的邦画論』から その1

「森達也が雑誌「Newsweek 日本版」に連載しているコラム『私的邦画論』が面白い。お前さんの好みに合いそうだよ」と友人に薦められて、遅まきながらバックナンバーをパラパラ読んでいる。 若い頃から日本の自主製作映画とポスト撮影所時代の現場周辺と裏街…

痛快が一番

映画は〈痛快〉が一番だ。面白い映画の頂点には必ず胸のすくような〈痛快〉がある。ストーリーとは限らない。エンディングのどんでん返しだけでもない。ワンシーンでもワンフレーズでもワンアクションでもいい。どこかに〈痛快〉が宿る映画は、極上の醍醐味…