芸術と芸能の違いは何ですか?
そう訊かれたらあなたはどう答えるでしょう。
劇作・演出家の鴻上尚史さんはこう答えています。
「芸術は『あなたの人生はそれでいいのか?』と挑発するものであり、芸能は『あなたの人生はそれでいいのですよ』と肯定するものである」【2021.6.22. 『演劇入門 生きることは演じること』集英社新書 】
気の利いた言い回しだなと感心するのはまだ早い。鴻上さんはこう続ける。「ただし、優れた作品には、どちらの要素も含まれていると、僕は思っています。割合が違うだけで。」
そう、対立・排斥する関係ではなく割合が異なるだけの同類項。映画もまたその通りであり、さらに言うなら、両者の割合は截然と分けられるというより二重化して滲み、〈極上の場合にはともに恍惚と陶酔をもたらす〉ものだと思うのだが、いかが。