2ペンスの希望

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2019-01-01から1年間の記事一覧

時代変われば‥‥ブツ変わる

ところ変わればシナ変わる。その伝で云えば、 時代変わればブツ変わる。そのことに不思議はない。 けど、新作映画の歩留まりの悪さに辟易することが続いている。 永らく親しんできた「映画」とは似ても似つかぬ「まがい品」「パッチもん」が多いて文句やため…

八百一番目

橋本治はいつも正しい。少しひねくれているが、圧倒的に正しい。間違いない。間違わない。胸のすく文章に出会ったので、忘れぬうちに書き留めておく。 出典は、橋本治著『熱血シュークリーム ㊤ 』【1982年3月 北宋社 刊】「最も孤独な長距離ランナー ちばて…

映画=書物

札幌に住む従妹が面白い本を送ってくれた。中澤千磨夫さんの『小津の汽車が走る時 続・精読 小津安二郎』【2019年9月 言視舎 刊】小津にまつわる本は山ほどあるが、すこぶる面白かった。存じ上げなかったが、著者は女子大で国文を教える先生にして、全国小津…

「敷居が高くてもいい」

字游工房の書体設計士・鳥海修さんについては何度か書いてきた。その新刊書『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本―職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』を読んだ。【2019年2月 河出書房新社】 「ここ数年、いわゆる「文字ブーム」と言われています。‥こうし…

映画の抽象度耐力?

映画はつくづく難しい。 ピカソの絵を見て、だれも「実際の顔はあんなじゃない」とは言わない。或る朝、人間が昆虫に変身していても、文学では受け入れられる。映画ではそうはいかない。嘘くさい、作り物、リアリティーが無い、とあちこちから文句が飛んでく…

コマワリ

マンガは長く読んできた。その魅力は「描線」と「コマ割り」に尽きる、そう思って今に至る。(ちなみにシンガーの魅力は「声」であり、絵画のそれは「色と光」だとも‥‥) こんな本が目についたので読んでみた。深谷陽/東京ネームタンク 著『もっと魅せる・…

やりたい奴から金を取る

社会学者 岸政彦さんの小説『図書室』【2019年6月 新潮社刊】を読んだ。 岸さんは大学生時代大阪でジャズ・ベーシストとして稼いでいたことがあるそうだ。併録された自伝エッセイ「給水塔」にこうあった。 「ジャズに限らず、いまという時代は、自己表現した…

作者≦観客

このところ思うところを忘れないうちに‥(ところどころあちこち脱線するが、そこんところヨロシク) 映画を筆頭に芸術芸能娯楽などの表現文化領域では、作り手(書き手)の精進・努力より、受け手の力能・感受(受感)こそが重大に問われる時代に入って来た…

広報映画『大阪の中の大阪』

五月晴れだが、今日は湿度100%ズブズブの昔話ひとつ。 下水道映画の本を読んでいて、大昔作った大阪市の広報映画のことを想い出した。企画コンペで日本映画新社が受託、その企画構成・演出を担当した。タイトルは『大阪の中の大阪』。(ためしにググってみた…

本『下水道映画を探検する』

映画にまつわる本はゴマンとある。が、イヤになるほどアタリは少ない。なかで最近読んだクリーン・ヒット一本。とはいえ〈こんなところに目を付けた俺様はエライ〉といったサブカル礼賛の変格自慢・自己満足本ではない。【星海社新書 2016年4月 刊】 タイト…

竜骨

戦後最大の思想家とか記念碑的写真集‥なんて御大層な帯の煽りコピー、加えてインテリゲンちゃんのいかにもなコメントには辟易する。けれど、長女:吉本多子(漫画家:ハルノ宵子)の序文は読ませる。 「舳先は常に波に対して直角に立てる。 横っ腹で波を受け…

「高瀬泰司とその時代」

今回も備忘録。昨日夕方から京大西部講堂に行ってきた。 「高瀬泰司とその時代」高瀬泰司さんの三十三回忌の催し。 長椅子、パイプ椅子、平台の上に茣蓙座敷、立ち見でほぼ満員。目分量でざっと四百人超。半数以上はシニアというかロートル(拙管理人もその…

「いつもそこには考えることの快楽があった」

十年ぶりに本『ドキュメンタリーの海へ 記録映画作家・土本典昭との対話』を読んでいる。【現代書館 2008年7月刊】刊行当時に読んでいたが、殆ど忘れている。 土本さんの映画は何本も見てきた。好きなのも嫌いなのもある。当たり前の話だが。本の末尾に、何…

「構造」&「時空」  『中国ドキュメンタリー映画論』

佐藤賢さんという若い(といっても1975年生まれだからもうエエおっさんだが)中国文学・映画の研究者の本『中国ドキュメンタリー映画論』を読んだ。【平凡社 2019.2.6.】デジタルビデオカメラ登場以降の中国の独立(インディペンデント)映画を概観した300頁超…

友川カズキ独白録 生きてるって言ってみろ

ニシナリ⇒尼崎⇒川崎⇒競輪⇒友川カズキ という流れで『友川カズキ独白録 生きてるって言ってみろ』を読んだ。解かり難さハンパなくて‥ごめんなさい。 よくある「語り下ろし:インタビュー本」だが、ウエハースみたいなフワフワお手軽本ではなかった。めっけも…

村人拒否の「副部長体質 短距離向」

佐々木史朗さんの本『時の過ぎゆくままに』【2018年11月 ワイズ出版】を読んだ。 インタビューにこたえた語り下ろし自叙伝。撮影所育ちでないプロデューサー第一世代、ずっと映画界どっぷりの人かと思っていたが、実はそうではなかった。「いわゆる映画って…

進化 深化 芯化

新しさって何だろう。新作なのに古臭い映画、どこかで見たような焼き直し映画が山ほど作られている。今まで見たこともないような映画なんて千三つどころか千本に一本生まれてるのかどうか‥。批判してるのではない。嘆いているわけでもない。世界中で百年以上…

本『名誉と恍惚』

先に片付けないといけないことがあるのに、ずるずると後回しにして読みふけってしまった。 松浦寿輝の小説『名誉と恍惚』【2017年3月刊 新潮社】765頁 定価5400円。とはいえ、公立図書館で借りて、イッキ読みだった。1937年上海を舞台にした冒険小説。松浦さ…

「超」より「過」「極」

荒唐無稽・支離滅裂‥訳が分からなくて現実離れしているものに出会ったとき、言葉に困って「シュールやなぁ」とお茶を濁したことはないだろうか。「私には、意味よく解かりませんけど、常人・常識を超えて何やら良さげ」といったニュアンスの褒め言葉として。…

贅沢な中途半端さ

情けないが、映画を見るとストレスがたまるのが敵わないので、本ばかり読んでいる。映画にまつわる本も多い。中身の濃厚・浅薄 玉石混淆は、映画も本も事情は同じだ。最近読んだのでは、映画史・時代劇研究家という肩書を持つライターの単行本『泥沼スクリー…

二氏哀悼

2019年1月 永く信頼を置いてきた人が亡くなった。映画の世界に入った頃からいつも半歩先を行く頼りになる先達だった千原卓司さん。 もう一人は、橋本治さん。改めて紹介する必要もなかろう。同世代を代表する知性だった。 お二人とも肥満、顔のむくみが気に…