2ペンスの希望

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やりたい奴から金を取る

社会学者 岸政彦さんの小説『図書室』【2019年6月 新潮社刊】を読んだ。

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岸さんは大学生時代大阪でジャズ・ベーシストとして稼いでいたことがあるそうだ。併録された自伝エッセイ「給水塔」にこうあった。

ジャズに限らず、いまという時代は、自己表現したいひとはたくさんいるけど、ひとのそれを聞きたい、見たいというひとはほとんどいない。結局どうなっているかというと、関西のジャズの店で生き残っているところは、その多くがジャムセッションで金を稼ぐようになっている。つまり、客ではなく、演奏する側から金を取っているのである。普段のライブの日はガラガラで、セッションのときになると人前で演奏したがる私のようなおっさんで満席になる、というのが、いまの関西の普通の光景だ。しかし考えてみると、たとえば演歌という世界もすでに何十年も前から、歌手が客から金を取るのではなく、カラオケ教室を開いて発表会をすることでそこで歌いたいひとから金を取るようになっている。もっとよく考えると、そもそも民謡や日舞伝統芸能の世界は、はじめから客ではなく弟子から金を集めるようになっている。文化というものはもともと「やりたい奴から金を取る」のが当たり前だったのかもしれない。

う~ん。そうかもしれないけど。