2ペンスの希望

映画言論活動中です

2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

グローブ

かなり以前だが、カメラは銃である、と書いた。今日は別の話。 探検家で写真家の石川直樹さんがラジオでこう話しているのを聞いた。 「カメラをグローブのように使いたい。何かを狙い撮りするのではなく、向こうからやってくるものを丸ごと受けとめたい」そ…

下山のガイド

みんな山に登りたがる。 「世に登山のガイドはあまたいる。けど下山のガイドはいない、だからオレがなる」と先輩の一人が引き篭もりの青年たちの相談に乗るようになって十年になる。彼は「下山のガイド」だ。山登り競争から外れて下りる人のためのガイド。実際…

新聞劣化

かなり前のことだが、辺見庸の発言にこんなのがあった。正確には憶えていないので うろ覚えのまま書くが、「全国紙日刊紙の記者は、給料を貰いながら愉快犯とマッチポンプをやっている連中だ」といった趣旨だった。辺見がまだ共同通信の記者と物書きの二束の…

Plan 6 逆転&美=痙攣

機会があって、戦後間もなしに作られた教育映画を何本か見た。その中から二本。 1947年東宝教育映画株式会社のクレジットタイトルで始まる『こども議会』(丸山章治:脚本演出) 1954年企画製作:文部省 製作担当:岩波映画制作所『教室の子供たち …

Plan 5 脱・個

映画は一人で作るものではない、若い頃からそう教わってきた。 そのせいか、個人映画とか、映画作家というのは苦手だった。食わず嫌いという傾向無きにしも非ずだが、いまだに「作家」とか「作品」という言葉に対するアレルギーが抜けない。仕事を始めた頃はフィ…

Plan 4 初期化

「映画史を書き換えなければならない」敬愛する映画人T監督の口癖だ。「これまで書かれてきた映画史は、商業映画の歴史であり、リアリズムの映画史でしかない。映画の世界はもっと広く深く豊かな歴史を築いてきた筈だ。アンチ・リアリズムの映画史が書かれね…

Plan 3 未開の沃野

CG技術の進化で、もはや作れない映像はない、撮れない世界はない、といわれる。 しかし、本当にそうか。 撮影機材の軽量小型化で、入り込めなかった路地裏、秘密の花園への潜入も容易になった。かつては実機をチャーターした航空撮影もいまや模型へりで賄う…

Plan 2 一気通貫

その昔、新聞はインテリ(似非インテリ?)が作ってヤクザが売ると揶揄されてきた。 映画にも似たような話がある。作る人と売る人は違う。撮影所や制作プロダクションと、配給・興行の世界では人種が違うとまで言われてきた。 そんな歴史が変わればいいな、そ…

Plan 1 レア&ハイ

来るべき映画は劇映画よりドキュメンタリーが一歩先んじて進むのではないか―― そんな仮説を立ててみた。さしたる根拠があるわけではない。が、キイワードは、はっきりしている。“よりレアに よりハイに”これである。リアルではない。従来型のリアリズムでは…

図面と地図

これから来るべき次の映画について模索したい。成算があるわけではない。五里霧中。暗中模索。それでも、日本の映画の過去の栄光、現在の混迷を越えて、未来の再生を準備する為に、「試行覚悟」と行きたい。(誰だ、試行錯誤の間違いだろうなんていう奴は‥)…

映画は映画である

映画は映画である。云うまでもない、JLGの映画『女は女である』のもじりだ。 映画を映画として評価・吟味しようということである。言い換えれば、映画を題材やテーマ、主義主張でかさ上げして評価するのを止めることだ。社会にとって人類にとっていかに重要…

今昔四 協業

野球が落ち目のようだ。日本プロ野球の観客動員が減っている。 若い世代では、野球よりサッカーの人気が高い、今の小学生は野球への興味を失っている、もはや時代劇のような扱いになっているという声も聞く。 突然だが「野球は二十世紀型のスポーツだったの…

今昔三 大部屋

昔は大部屋だった。役者の話ではない。地方の宿泊ロケに出かけて時の宿のことだ。 スタッフの下っ端ペーペーは大部屋で寝起きした。PR映画や記録映画の小編成スタッフの場合はなおさらだった。監督も撮影助手も一緒に寝た。メシも風呂も一緒。酒席で先輩の話…

今昔二 ゲリラ

今は正規軍なき時代だ。わけても映画の世界はそう。つくづくそう思う。 確かに、大手メジャーと言われる三社はある。しかし、彼らに映画制作能力があるとは誰も思っちゃいない。当の彼ら自身からしてそうだろう。自前で映画を作り次世代を育てることなんかと…

今昔一 ぴあ

情報誌の時代があった。中央大映画研究会の矢内廣さんが中心に作った「ぴあ」、関西には「ぴあ」に先行する「ぷがじゃ」もあった。何処にでもあった。誰もが携行していた。今は昔、「ぴあ」も「ぷがじゃ」も無くなった。【註】 メジャーもマイナーも、インディ…

劣等生

昨日の競輪上人と同じ1963年に作られた『われら劣等生』ノーマーク。全く知らなかった。制作はワールドプロ 配給は松竹。監督は当時日本テレビのディレクターをしていた佐藤雄三(不勉強で存じあげない)どんな事情があったのかは知らないが、この頃既に…

競輪上人

今日は、1963『競輪上人行状記』のエンディングシーン。原作:寺内大吉 脚本:今村昌平・大西信行 監督:西村昭五郎のデビュー作。このYouTube サイズが少々いびつで見苦しいところもあるが、最後の予想屋の長口上はお薦め。

批評は‥

数日前に、ブログの読者から「アナタはどうして個々の映画についての批評・論評をしないのか」と訊かれた。ブログを始める時に、個別の映画評は一切書かない、時代と情況のみを書く、と決めた。個々の映画の良し悪しは、巷にゴマンと溢れている。ネットを叩…

自己慰安

映画を作る人の中には、「みんなのために作っている」とか「社会のために作っている」と言う人がいる。嘘をついてはいけない。すべての表現は、第一に自分のため・わたしのために作る。(吉本隆明さんの言葉を借りるなら「自己慰安」=自分にだけ通ずる慰みとい…

自分で見る

一昨日、98%の映画はどうにでも評価できる、と書いた。だから誰も信用してはいけない。当たり前のことだが自分のこの目で見るしかないのだ。それも(ゆるされるなら)出来るだけ沢山。 ただ、間違ってはいけない。沢山見たから偉いのではない。生涯忘れら…

eiga@〜

若い頃から、ベストセラー・話題作というだけで敬遠、そっぽを向いてきた。ひねくれたヒガミ根性なのだとは承知している。世間を狭くしているとも思う。ただ、自分が見なくても、他の人が十分評価しているのだからもういいだろう、と思ってパスしてしまう。…

相性

映画にも相性がある。どうしても最後まで観られない映画がある。K瀬N美さんやK野Tしさんの映画がそうだ。世界の映画祭で受賞しようと高名な評論家先生が褒めようと駄目なものは駄目なのだ。きっと賞を受けたりするのだから、悪い映画でもないのだろうが、何…

戦力外通告

ラジオを聞いていたら、戦力外通告でプロ野球界を去る選手が今年は88人いると伝えていた。引退が報じられる有名選手の影で、記録にも記憶にも残らず姿を消すプロ選手たち。それなりに野球が上手くて自負もあってプロになったのだろうに‥と思っていて、ふと…

キートン

CGやデジタル技術でいまや出来ない映像表現はなさそうだが、加工精度が上れば上るほど 無味乾燥に感じるのは、歳のせいか時代のせいか。映画の初期、正味の身体運動性でスクリーンを縦横に駆け巡ったスターたちが実在した。 今日は代表選手を一人=バスター…

腕組

以前あるパズルチームのネーミングを頼まれたことがある。日本のパズル作家たちが集まって徒党を組んで世に打って出る、そのお先棒担ぎの助っ人という触れ込みだった。百ほど考えついたが、まだ日の目を見ないまま塩漬けになっている。その時考えたネーミン…

題名

思い返せば、色んな仕事をしてきた。委託、請負、自前、助っ人、分野も形態も様々だ。そんな関係で、これまでに何百本も題名を付けてきた。題名は映画の顔、名刺か包装用紙みたいなもの。お澄まし顔の陰でアッカンベーをしているようなのも混じるが、命名の…

進化?退化?

昨日ラジオのことを書いたのに、今日はテレビと新聞の話題。 いい訳めくが、昨日まで旅に出ていた。旅先のホテルでは普段しないことをする。NHKの朝のニュースを見て、日本経済新聞とスポーツ新聞を読んだ。その中から三つ。 その一:NHKおはよう日本10月…

沁みる

東京で仕事をしていた時の話しだ。当時ニッポン放送で『お早う!中年探偵団』で人気だった高嶋ひでたけさんにインタビューしたことがある。その時に聞いたラジオ論が忘れられない。高嶋さんいわく「ラジオは沁みるんです」 確かにそのとおりだ。画が無い分、…

ベスト25

『バラエティ(Variety)』と並ぶアメリカの代表的な映画業界誌『ハリウッド・リポーター誌(The Hollywood Reporter THR) 』が2012年8月世界の映画学校/大学のベスト25を発表しているのを読んだ。1位 南カリフォルニア大学(USC:University of Souther…

教育的エネルギー

他の表現物に比べると、映画の教育的エネルギーは格段に高い。だからこそなのだろうが、多くの国多くの時代でプロパガンダに利用されてきた。かつてレーニンは「すべての芸術の中で、もっとも重要なものは映画である」と語り、「映画は大衆を教育するための…