2ペンスの希望

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今昔一 ぴあ

情報誌の時代があった。中央大映画研究会の矢内廣さんが中心に作った「ぴあ」、関西には「ぴあ」に先行する「ぷがじゃ」もあった。何処にでもあった。誰もが携行していた。今は昔、「ぴあ」も「ぷがじゃ」も無くなった。【註】
メジャーもマイナーも、インディーズも、何もかもを“網羅”して“対等”に掲載した情報誌が退場した。インターネットの普及が情報入手のスタイルを変えてしまったことが一番なのだろうが、大手出版社角川による◎◎ウォーカーが何とか生き延びているのを見ると考えさせられる。読者・観客の側で、自ら情報を選ぶ力が弱っているのではないか。あまりに情報が多すぎるのか、自分で選んで失敗するのが嫌なのか、既にセレクトされたものしか受け入れなくなっているようだ。お薦めベスト10、とか誰々が厳選した何々といった見出しが表紙を飾る。ぴあやぷがじゃは、受身じゃなかった。主体は読者、編集者もそのことに自覚的だった。一人一人がそれぞれにインデックス・索引として利用してきた。取捨選択は自由、吟味・選択は読者の責任だった。今はおんぶに抱っこ。ガイドやナビしか受け入れられなくなっているようだ。索引よりカタログ。自分の目で選び、失敗することで学習し成長する道は途絶したのだろうか。情報が溢れかえる中で、人間が痩せていく。何かが太れば何かが痩せる。やがて目に見えぬ栄養失調に気付くその頃には「時すでに遅し・後の祭り」というのではかなわない。

【註:雑誌ぴあがなくなったのであって、会社ぴあは、チケットぴあを中心に業態転換を経て見事に生き延びている。これもまた象徴的】