2ペンスの希望

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宇多丸 本

昔々から二本立、三本立が好きだった。(育った大阪の下町には、四本立の映画館もあった。)生来ケチで厚かましい性分だったこともあるが、昔の映画館は入れ替え制ではなかったし、朝から晩まで入り浸って浴びるように映画を見ていた。
『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』【小学館 2016年11月 刊】を読んでいて、そんなことを思い出した。
宇多丸さんは1969年生まれ、若い人に人気の映画評論家らしい。名前は知っていたが、本もラジオも見たことも聞いたこともなかった。至極まっとーな映画好きであることがよく分かった。(M山さんよりずっと真面目で謙虚)
もちろん、生まれも育ちも違うので、映画の好みもまるっきり違ったが、そんなことは問題じゃない、当たり前。 とりわけ共感したのは「あとがき」。ちなみにこの本、月刊コミック誌で、読者からの人生相談風投書に、宇多丸師匠がオススメ映画で答えるガイド本だ。
「(いまさら) こんなことを言い出すのもなんなんですが‥‥。  (中略)
 なるほど、他人の評価を聞き、間違いないと思われる情報を集め、作品選びの精度を上げていけば、「最初から観たいと思っていたような映画」にたどり着ける確率は高まるでしょう。それはそれで結構なことです。
 ただしそのぶん、「思ってもみなかったような映画」に出会える可能性は低くなる、という点は考えてみてもいいんじゃないか。‥
(中略)‥少なくとも、「最初から観たいと思っていたような」安パイばかり選んでいたら、ビフォー/アフターで自分が決定的に変わってしまったと感じられるほどの「ショック」は、決して得られないでしょう――ごくごくたまであれ訪れる、そのような「想定外」感覚こそ、映画を観るという行為の最大の醍醐味であり、 価値だというのに!
そのとぉーーーり。効率性ばかり追い求め、失敗したくない人は、はなから映画になんか近づかないほうが身のため、世のため、人のため、そう思う。