2ペンスの希望

映画言論活動中です

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

四畳半

1973年『四畳半 襖の裏張り』 脚本・監督:神代辰巳 撮影:姫田真佐久 四畳半から覗く世相・透けて見える時代。予告編の字幕「男と女の 焼肉のたれ,」はチーフ助監督・鴨田好史の案だろうか。

ヨッパライ

1968年『帰って来たヨッパライ』脚本:田村孟+足立正生+佐々木守 脚本は図式的で映画の出来もイマイチだが皆若い。監督:大島渚36歳 撮影:吉岡康弘34歳。フォークルの三人は20代前半だ。

「頭のいい不良が‥」

現場を踏まえた人の言葉にはリアリティと説得力がある。斉藤光正監督。1932年生まれ、2012年11月25日没。日活で今村昌平に付き、早くにテレビに移り、青春ドラマ、現代劇、時代劇と何でもこなした。映画史に名を残すような名作監督ではない。TV…

小型軽量化 なしくずしの死

同年配の映画人から最近の撮影現場の話を聞いた。 カメラはCANONのデジタル一眼レフカメラEOS-C300。とみに増えてきたスチールカメラを使っての動画撮影だ。ほとんどがコスト削減からの要請だろうが、豊富なスチールカメラのレンズ群が使えるというメリット…

旧作耽溺のすすめ

新作偏重より旧作耽溺をおすすめする。碌でもない新作映画に貴重な時間とお金をかけるより、山のようにある旧作を見る方がずっと楽しく、すこぶる健康的だ。とは言っても年配者は、ともすると「昔劇場で見た映画」を「懐かしさ」で見直すだけで「見逃した映…

型枠大工

小田嶋隆さんの「コラム道」という本を読み終えた。【ミシマ社2012年5月21日刊】 途中から無残に失速し迷走するが、幾つか面白い比喩・用語法に出会った。 そのひとつ。「全世界は作品にならない」確かにその通り。人生360度全部を映画にするなん…

『眼光戦線』

鈴木志郎康さんという詩人がいる。 映画好きで若い頃はNHKのキャメラマンをしていたが阿呆らしくなったのか早くに辞め、以来長らく「極私的」映画作りに取り組んで現在に至る。その昔、友人の春木一端さんと組んで、空想的なというか、虚構的な映画批評のパ…

バルタン星人

バルタン星人命名の由来には諸説あるようだが、スタッフが、当時流行っていたフレンチポップスの歌手=シルヴィ・バルタンのファンでそれにちなんで名付けたという説が気に入っていた。 映画はあるもので作る。近くにあるものは何でも利用する。怪獣の名前を…

南海平野線

今日はちょっとしたワケありで脱線する。 YuoTubeで見つけた「南海平野線」。 今は昔、四歳の時から十八歳まで沿線の「股ケ池(ももがいけ)」に住んでいた。 大阪ディープサウスの子。田辺、北田辺、南田辺、西田辺、文の里、駒川。 歩いていける範囲に映画…

飽食の怠惰

デジタルの時代である。 フィルムからビデオテープ、メモリーチップに変わりながら、それに則した表現論・文体論、技法・手法は未だ無い。あるのかもしれない。不勉強で知らないだけかもしれない。けど今日は敢えて無いと言い切って進める。 便利だから、コ…

船そのものを運ぶ

極論を書く。 映画は「事実」や「研究成果」や「メッセージ」のような「積荷」を運ぶものではない。運ぶのは「船そのもの」なのだ。だからこそ、船としての「芸」「パフォーマンス」がなければならない。そんなことを考えた。 ヒントは、昨日から読み始めた…

画はないのにドラマはあった

奇妙な体験をした。或る映画を観た。200万部を超えるベストセラー・ミステリーの映画化。時間は2時間29分。観たのはDVD。 まるでTVだった。(TV画面だったからではない。映画館で見ても恐らく同じことだっただろう。)画がないのだ。監督は、スタッフはこ…

自給と反自足

昨日まではいささか偉そうなことを書きなぐりすぎた。反省。 大層なゴタクを幾ら並べようと、絵に書いた餅では腹の足しにはならない。 映画はあるもので作るものだ。なければ何とか工夫するか工面するしかない。つまりは自給。しかし、自足してはいけない。…

ササラ型とタコツボ型(根を共有する)

社会的な題材を描こうと、個人的な素材に焦点をあわせようと、最近の(記録)映画はどれも閉じてしまっているように思う。それぞれ当人たちにとってはのっぴきならない課題なのだろうが、その切実さが地続きのものとして見る人の元に届かないのだ。心は動か…

園庭と荒野(ジャンル映画)

ジャンル映画なんて云い方はとうの昔に廃れた、そう思ってきた。 今日は、それがどっこい生きていたという話。 ひょんなことから「学生残酷映画祭」なる存在を知った。応募規定にはこうある。「流血や人体破損などの残酷描写があること」。ホラー、スプラッ…

短編と長編

もちろん長さの話ではない。 長編はひとつのストーリー、短編はそのストーリーのワンシーン・ワンカットという人もいる。少し違うと思う。 郷原宏さんという新聞記者出身の詩人・文芸評論家は、小説に限ってのことだがと断って、短編は「省略と抑制が利いて…

照明と録音

どの世界にも職人が少なくなった、という嘆きはよく聞く。 調理場に自動皮剥き機が普及すると、下ごしらえ・皮剥き職人はお払い箱になる。 便利だし省力化・コストダウンにもつながる。店も客も喜ぶ。イマドキの言葉で言えば、WIN-WINの関係ということになる…

上方落語と江戸落語

ラジオでこんな話を聞いた。 上方落語は、境内や道端に舞台を作って道行く人の足を止め「辻咄」(つじばなし)や「軽口」(かるくち)という自作自演話を聞かせて銭を稼いだのが始まり。だから初めから仕舞いまで笑いが必要。何十秒に一回か笑わせないと客は…

スケアード・ストレート

たまたま夕方のニュースを見ていたら、プロのスタントマンによる「交通安全教室」の話題を放送していた。 「スケアード・ストレート」という教育手法なのだそうだ。 スケアード:scaredというのは、「怖がらせる・おびえさせる」という意味の英語だ。scared s…

発信せよ

映画館に行くと、年配者ばかりだ。 若者たちは、映画館になんぞ行かない。働き盛りは時間がない。かくて映画館は上品なご婦人方と不良老紳士の溜まり場になっている。 そこで、提案。提言。 映画の魅力(魔力)(狼藉力)(映画力)を知る人士(拙の推量では…

作家≦読者 或いは 作家=読者

先日、大学映画部の先輩からこんなことを教えて貰った。 「あらゆる小説は模倣である」(清水良典の著書 幻冬舎新書) 「読者は密漁者である」(ミシェル・ド・セルトーの言葉)不勉強ゆえともに知らなかった。清水良典さんは、15年余り、愛知県の大学で創…

これぞ映画これも映画これこそ映画

映画らしい映画+映画らしくない映画を作りたい、そう思っている。 キャッチフレーズは決まっている。 「これぞ映画」「これも映画」「これこそ映画」 これである。 今まで誰も見たことのない映画、プラスワンではなく、ネクストワンでもなく、オンリーワン…

物語の現在

今日も理屈っぽい論を‥少々。フランスの高名な思想家の指摘を待つまでもなく、「大きな物語」が成立しづらくなっている。天下国家、民族、神、戦争と平和、社会変革、共産主義‥‥などを正面に据えた 物語は敬遠され、背景化して久しい。大きな物語から小さな…

特典が欲しい?裏書が必要?

最近立て続けにミニシアターの関係者から似たような話を聞いた。 いまや公開初日に監督や出演者が舞台挨拶するのが常態になっている。上映前の挨拶や上映後のトークショーなどが盛んに行われる。それがないと観客が集まりにくいのだという。ただし、ゲストが…

160円

私鉄沿線の郊外駅に出かけた。駅前のショッピングセンタービル。その中のテナントに入っている中規模書店でDVDボックスを見かけた。コスミック出版というところから発売されている『究極の名作映画大全集』10枚組1600円。収録されているのは、「カサブ…

“居合わせてもらう”

永らく記録映画のキャメラマンとして働いてきたYさんは、数年前から請われて老舗の映画大学で撮影技術の実技演習を担当している。彼の授業は、三脚を担いだままでの下肢屈伸体操から始まる。身に付いた知性の人だ。そんなYさんから届いたメール。 記録映画(…

まっちゃん

何十年ぶりかに見直して、失望する映画もあれば、あらためて舌を巻く映画もある。 木下惠介監督『二十四の瞳』(1954)は後者だ。世評名高い名作ゆえ「何を今更」と言われそうだが、若い頃はその真っ当なヒューマニズムが面映くて敬遠していた。昨秋見直…