2ペンスの希望

映画言論活動中です

160円

私鉄沿線の郊外駅に出かけた。駅前のショッピングセンタービル。その中のテナントに入っている中規模書店でDVDボックスを見かけた。コスミック出版というところから発売されている『究極の名作映画大全集』10枚組1600円。収録されているのは、「カサブランカ」「市民ケーン「群衆」素晴らしき哉、人生!」「望郷」「自転車泥棒」「天井桟敷の人々」「オペラ座の怪人」「第三の男」「禁じられた遊び」申し分ないラインナップ。
知らなかった。1枚160円。
同行者は知っていたようだ。かなり前から出ていたよと教えてくれた。
制作コストと流通コストを考えると何ともいえない価格だ。「市民ケーン」が160円「第三の男」も160円。家に置いて、いつでも何度でも見られる、子供たちや孫たちの世代にもひょいと見せられる。
時代のスピードに驚き我が身の不勉強を恥じ入る。他にも『アカデミー賞大全集』『フランス映画名作コレクション』『小津安二郎大全集』などが棚に並んでいた。
う〜ん、今更だが、時代は変わった、
そのことを認めなければ何も始まらない、始められないことを思い知らされる。
デジタル技術とネット社会が、映画の製作と流通・消費を変えたのに、作り手たちの不勉強・置いてけぼりばかりが目立つ。
フィルムの灯を消すな、映画文化を守れというのも良い。しかし、新しい時代に合わせた新しい映画論・その方法論・戦略がもっともっと登場してきても良さそうなものだ。もちろん、変わらぬものがあろう。変わってはいけないものも‥。何が変わり、何が変わらないのかをきちんと具体的に見極め腑分けしながら、前に進まなければならないだろう。
フィルム信者、映画館至上主義者が見て見ぬフリをしている間にも時代は進む。いや、進んでいるのではない、退行退廃しているのだという人は、この際 放って置く。