2ペンスの希望

映画言論活動中です

2014-01-01から1年間の記事一覧

字幕二題②

昨日に続いて、映画字幕の話。 B.ワイルダーの『お熱いのがお好き』のラストシーンの名台詞。 Nobody is perfect. 最近見直したら、字幕が「完璧な人間なんていない」となっていた。 昔々見たのでは「誰にだって欠点はある」だったと記憶…

字幕二題①

いまだに映画は字幕派だ。若い頃からずっと字幕にお世話になってきた。 アメリカ・イギリス映画なら、清水俊二さん・高瀬鎮夫さん、ヨーロッパ映画は秘田余四郎さん。清水俊二さんの本『映画字幕(スーパー)五十年』【昭和六十二年三月ハヤカワ文庫版】には…

「新しき民」

前作が面白かったので注目している山崎樹一郎さんの新作が出来上がったよ、と 知人から教えられた。 『新しき民』岡山県真庭市で作られた。なんと時代劇・白黒だ。(ということは、現代劇・カラーに比べて、格段に時間もお金も掛かるということだ。)不見転…

ひとり出版社

上原昌弘さんという編集者が書いた「ひとり出版社に、注目!」という文章を読んだ。【ムダの会の冊子「いける本・いけない本」第21号 2014年12月10日発行】 「社員数の多い大手は売れる本を作らねばならないという宿命がある。具体的な数字でいえば初版部数…

誠実だが

決して悪くはないのだが、どうしても映画が面白くない(と思う)カントクさんが居る。 昔なら小栗康平さん、最近だと是枝裕和さん。誠実で良心的なのは分かるつもりだが、どの映画も楽しめない。生理が合わないといえばそれまでだが‥。 古臭いとか新しいの話…

ミシマ社②

日本の映画業界はどこかで何かをこじらせて行き詰っている、そう思っている。 事情は出版の世界でも同じらしい。「本が売れなくなった」「出版不況だ」という声に抗して、単身出版社を立ち上げた三島邦弘さんの新刊にこうあった。 【朝日新聞出版 『失われた…

「執炎」

脚本:山田信夫 監督:蔵原惟繕 撮影:間宮義雄 のトリオで忘れられないのは1964年11月封切りの『執炎』だ。 浅丘ルリ子と伊丹一三の悲壮悲恋もの。 最初に見たのは高校一年生の冬。去年ほぼ半世紀ぶりにスクリーンで再見した。 「吹雪く餘部鉄橋の上…

銀恋

懐かしついでに、今日は60年代日活映画から、タイトルクレジットを。 日活調布 脚本:山田信夫 熊井啓 監督:蔵原惟繕 撮影:間宮義雄 美術:松山崇編集:鈴木晄 音楽:鏑木創 助監督:西村昭五郎 1962年3月4日封切り 服部時計店朝六時のチャイムと…

実録路線 急

三日目 東映京都 脚本:高田宏治 監督:深作欣二 撮影:中島徹 美術:井川徳道 編集:堀池幸三 音楽:津島利章 助監督:篠塚正秀 (1977年2月26日封切り)予告編には渡瀬恒彦が出てくるが、撮影中の事故で降板、本編には登場しない。 他にも色々因縁…

実録路線 破

実録路線 二日目は www.youtube.com 東映東京 脚本:鴨井達比古+松田寛夫 神波史男 監督:深作欣二 撮影:仲沢半次郎 美術:桑名忠之 編集:田中修 音楽:津島利章 助監督:小平裕(1975年2月15日封切り) 独房の壁に残したと伝えられる石川力夫の時…

実録路線 序

9月に書いた春日太一さんの本『あかん奴ら』に続いて、同時代の東映京都撮影所に 取材した伊藤彰彦さんの『映画の奈落 北陸代理戦争事件』 を読んだ。【国書刊行会2014年5月刊】 伊藤さんご自身が書かれているように「ノンフィクションと、東映映画史と…

「群れず 拒まず 侮らず」

だいぶ前の事だが、「構えない 隠さない 飾らない」という題名をつけた市販ビデオを作ったことがある。障害者雇用がテーマだった。 以来、三重連のこの言葉が好きでよく使ってきた。 ビデオは、「あせらない あわてない そして最後に、あきらめないこと」と締…

窓と鏡

以前「窓としての映画、鏡としての映画」と書いたことがある。 映画は、世界に開かれた窓・自分の外側で起きていることを知るための窓であり、 同時に、自分を映す鏡・自分の内面を知るための鏡でもある、そんな思いから出た言葉だ。何のことはない、ちょっ…

複数原作

ジャン・フォートリエ展を見てきた。アンフォルメル以前の人質シリーズに照準を合わせた展示だったが、初期の風景画や裸体のデッサン力に魅かれた。幾つか紹介したいところだが、写真ではとても伝わりそうにないのでエントランスだけどうぞ→ 美術の力は、結…

「乾いた涼しい風」

『ドミトリーともきんす』のあとがきで、高野文子さんは自然科学の本は、「乾いた涼しい風が吹いてくる読書なのです」と書いた。 例を挙げてみる。 「自然は曲線を創り人間は直線を創る。往復の車中から窓外の景色をぼんやり眺めていると、不意にこんな言葉が…

高野本+寅彦さん

少し前に、高野文子さん12年ぶりの新刊『ドミトリーともきんす』を読んだ。 【2014年9月中央公論新社刊】 科学の勉強をする学生さんたちが住む小さな下宿屋さんを舞台にした物語だ。トモナガ君、マキノ君、ナカヤ君、ユカワ君の四人が登場する。 「自…

札幌 蠍座 

東京の友人から、札幌の蠍座が12月30日で閉館するという話を聞いた。 支配人の田中次郎さんとは面識はない。ただ、何人もの方から、その人となりや評判は聞いていた。「映画をイベント化させない!」「映画は映画で勝負すべし」「俳優や監督の舞台挨拶は…

一字違いで‥

ばっちり とばっちり ラジオでこんなのをやっていた。 一字違いで大違い。 たくみ たくらみ 一文字加えるだけで言葉は変容する。 狭霧 朝霧 こんなきれいなのもある。 いとし いいとし 当管理人の心境 きょう ふきょう これもそう きょう きょうふ これまた…

営業部長!?

西川美和「名作はいつもアイマイ」の後書き「もう夢は見ないけれど」にこんな一節があった。なぜオリジナル脚本にこだわるかを語ったくだり。 「映画監督なんていったって、マリンキャップの黒眼鏡で、フレームに入ってしまった民家をどかしてしまえと言い放…

アイマイ

西川美和編著「名作はいつもアイマイ 溺れる読書案内」を読んでいる。【講談社2008年6月刊】芥川から色川、向田まで十篇が採り上げられている。名作はいつもアイマイ。確かにその通りだ。ふくよかでしなやか、柔らかにして鋭利、弾性と剛性を倶に持つ。 …

評価

久しぶりに封切り日に映画を観た。(封切りという言葉も古臭いが‥) 正統的な「短編文化映画」的なつくりで懐かしく好感を持った。けど、はたと立ち往生してしまった。 良く言えば、抑制の効いたおだやかな評伝映画、 しかし、 悪く言えば、踏み込みの少ない中…

ライター

昨今 評論家というのは流行らないらしい。 ハスミ、ヤマネ以降、とんとお目にかからない。それでも、紙・電波・ウエブ様々なメディアで、映画についての発言や記事は増えているように思う。 が、評論家という肩書きは見当たらない。おこがましいのか、奥ゆか…

男の顔は‥

加藤泰監督の映画はたくさん見てきた。好きな映画は何本もあるが、一番思い出深い映画を一本だけ‥ということなら、迷わない。1966年松竹作品『男の顔は履歴書』 ということで、今日は久しぶりに予告編。 ちゃちな張りぼて人形、主役の棒読み丸出し台詞‥‥…

長回し

記録媒体が、フィルムから磁気テープ、ディスク、メモリーカードへと変わるにつれて、 長回しがますます増えている。 緊張感を欠いた撮りっぱなし、だらだらと続く長回しには辟易する。それでも、ライブ感を大切にした、生な一回性・偶然性の尊重、現場の空…

「昔々勝手にしやがれという希望」

大学時代の先輩から句集を送って(贈って)いただいた。 『忘憂日録』【甲斐一敏句集 ふらんす堂 2014年11月刊】 初句集だ。大変な映画好きで、映画にちなんだ句も数多く並んでいる。 今朝ほど、その先輩から思いがけなく素敵な知らせを受け取った。 清…

「100調べて10書け」

清水潔さんの本を読んだ。 『殺人犯はそこにいる 北関東連続幼女誘拐殺人事件』【新潮社2013年12日】 清水さんは「フォーカス」のキャメラマンを経て、現在は日本テレビ報道局の調査報道・事件記者。調査報道のあるべき姿を挙げている。 「100調べて…

具体1

桃、柿、蜜柑、そしてトマトとくれば、日本映画好きの何人かは“はぁはーん”と分かるだろう。そのとお〜り。加藤泰監督の十八番、季節の果物を使ったラブシーン演出である。桃は『明治侠客伝 三代目襲名』、柿は『遊侠一匹』、蜜柑は『緋牡丹博徒 お竜参上』…

キャッチャー?バッター?

昨今の民主主義のあり方を憂えた本の中にこんな一節があった。 「映画の観客が「鑑賞者」ではなく、「消費者」と化してきているのです。のみならず、作り手も何でも懇切丁寧に説明し、悲しい場面に悲しい音楽を流し、楽しい場面には明るい音楽を流す。つまり作…

底荷

若い頃から小関智弘さんの本が好きで欠かさず読んできた。 忘られられない言葉は幾つもあるが、「底荷」はそのひとつだ。小関さんは書いている。 「町工場の旋盤工という労働生活を底荷として,ずっと文章を書いてきました」【講談社現代新書「働くことは生き…

眼福

目を背けたくなるようなのは、現実だけで十分だ。 それがいかにリアルであっても、狭い映画・冷たい映画は見たくない。おぞましいものもパス。ザラリと砂を噛んだような後味はゴメンだ。美しいもの、温かくなるもの、人間捨てたもんじゃないなと幸福な気分に…