2ペンスの希望

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高野本+寅彦さん

少し前に、高野文子さん12年ぶりの新刊『ドミトリーともきんす』を読んだ。
【2014年9月中央公論新社刊】
科学の勉強をする学生さんたちが住む小さな下宿屋さんを舞台にした物語だ。トモナガ君、マキノ君、ナカヤ君、ユカワ君の四人が登場する。
自然科学の本は、小説の読後感と違って乾いた涼しい風が吹いてくる」 そう感じた高野さんが「自然科学の本のことを、紹介する実用の本」として
描いた漫画本だ。
高野さんご自身は、「今回は、自分の気持ちは見えないところに仕舞いこんで」「絵を、気持ちを込めずに描くけいこをして」「からしっぽまで同じ太さが引ける製図ペンを使って」「静かな絵を描く」ことを心がけたと書いておられる。が、どうしてどうして、紛れもなく高野文子一流の仕事、「乾いた涼しい風が吹いてくる」素敵な漫画だった。
思わず知らず自然科学の本を読んでみたい気にさせられた。そんなことを思っていたら、京都の知人からの便りに「寺田寅彦の映画論」とあった。ご承知のとおり先の四人より少し先輩にあたる物理学者だが、実は寅彦さん、大変な映画好きで映画理論家としての文章も多く残している。管理人も若い頃、「映画と俳諧連句」について書かれたものを読んだことがある。中身はすっかり忘れていたが…ふと思い立って、青空文庫を訪ねてみた。となんと、映画関連のものが12本も読める。有り難い時代になったものだ。中のひとつ「映画芸術」を早速読んでみた。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2469_9349.html
初出は1932年(昭和7年)8月「日本文学」
80年以上も前に書かれたものだが、骨格は古びておらず見事、示唆に富む(と思う。)
少し長いので時間のあるときにでもどうぞ。 特に若い映画人にはお奨め。
乾いた涼しい風が吹いてくる」こと請け合いだ。