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ひとり出版社

上原昌弘さんという編集者が書いた「ひとり出版社に、注目!」という文章を読んだ。【ムダの会の冊子「いける本・いけない本」第21号 2014年12月10日発行】
社員数の多い大手は売れる本を作らねばならないという宿命がある。具体的な数字でいえば初版部数が4000部以上。いい企画だが地味といった小部数なもの(1000〜2000部初版)は手がけにくい。ネットを介し地道に口コミを広げることが可能になった現在、おのれの感動を届けたいという小出版社の熱い思いは、書物離れを喧伝される若者層との距離を一挙に縮める可能性がある。実質的な価値のある書物文化の未来を、小出版社が担う時代が目の前に来ている‥‥」として、1991年3月創業あんず堂、1993年6月創立の岩田書院をはじめ、十社以上が紹介されている。上原さんに拠れば50社はくだらないということだ。
別の記事=朝日新聞デジタル(2011年2月26日配信 署名:河合真美江)には「初版3000部を完売して増刷するものもあれば、凝り過ぎて500部が完売できないケースもある。」とあった。「書店委託しない、ネット直販が広まったこと」や「取次ぎ配本に頼らす、スタッフの並べたい本を置く個性派書店の登場」なども視野に捉えている。
日本映画の世界でもここ数年、ひとり配給会社や少人数で配給宣伝業務を手がける動きが目立つ。(すぐに名前が浮かぶのは、東風、太秦、浦安ドキュメンタリーオフィス、あたりだが‥)
もとより、陽の当たる場所・ばら色の人生が待っているわけではさらさらない。スリムな分、小回りも利くが、体力も無くたどたどしく覚束ない。さきに「実質的な価値のある書物文化の未来を、小出版社が担う時代が目の前に来ている‥‥」と書いた上原さんはこう続けている。「‥‥とはいえ、毎月の売り上げを見る限りでは、その未来に到達するまでどう頑張ればよいのか、途方に暮れてしまうのですが。」ともあれ、数日前に書いたミシマ社はじめ、ひとり出版社の事業展開が、日本の映画の閉塞状況を切開する可能性につらなるヒント足りえるのかどうか、見守って行きたい。(この稿=考 つづく)