2ペンスの希望

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ひとり出版社の舞台裏

年末から年始にかけては、映画は殆ど見ないで溜まっていた本ばかり読んでいた。
(というのは少し嘘で、何本か見たのだが、新作には心が動かされなかった。愉しんだのは古い映画ばかり。)というわけで、読んだ本の話。
岩田博さんの『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』【無明舎出版2003年7月刊】が面白かった。岩田さんは、大学を出てから20年ほど歴史・民俗学の専門出版社に勤めた後1993年に「岩田書院」を立ち上げた。以来今に至るまで20年以上一人で日本史・民俗学関係の学術出版をやってきた。この本は、十年の節目(2003年)を機に、創業以来宣伝用に発行してきた「新刊ニュース」の裏面に書いてきた「裏だより」を纏めたものだ。ひとり出版社がかかえる問題をありのままに語っている。台所事情・財布の中身までが見えてきて身につまされる。
日本史・民俗学関連の専門書の初刷部数は1993年当時で700部、現在は(2003年のこと)500〜600部、年々少なくなっていること」、「国文学の世界はもっと少なく初刷300部」とか、「専門書の場合A5判上製本で頁数×20円が定価」とか「一般紙の広告は殆ど効かない。反応は年々悪くなっている」とかとか。
この「裏だより」好評でpart3まで出版された。最新号含めすべてはウエブでも読める。
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/uratop.html
全部を読んだわけではないが、管理人のお奨めは、No.541(2009.01)「各社とも悲惨な結果です」とNo.827(2013.10)「各社とも悲惨な結果です(続)」
本にはこんな記述もあった。
考えてみれば出版業というのもへんな業種です。原稿は著者が書くし、印刷は印刷屋さんがして、製本は製本屋さんがするし、売るのは本屋さんがやってくれます。となると出版社は、本を作る資金を出して、在庫をかかえておく場所を確保するところ、といえるのかもしれません。」No.19(1995.01)