2ペンスの希望

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『本屋と図書館の間にあるもの』を触媒に ①地元の版元

最寄りの公立図書館で見つけたので借り出して読んでいる。

伊藤清彦×内野安彦『本屋と図書館の間にあるもの』【2021.17. 郵研社 刊】

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ともに地方で書店経営や図書館運営にかかわってきた二人の対談から生まれたこの本、話題は雑多だが、本屋と図書館の現状が透けて見えてきて、興味深い。複雑で構造的問題を抱える業界事情(本屋業界、出版業界、図書館業界、地方公務員業界、‥‥)が垣間見える。ということで、この本をテキスト・触媒に、今の映画についてしばし考えてみたい。ただし、例によって無責任な与太話以上ではない。伊藤清彦さんや内野安彦さんのことについては説明しない。勝手にググってみて)

最初のキイワードは、〝地元の本を大切にする〟

地域に根ざす、地元を大切にする。

 寿郎社、無名舎出版、荒蝦夷、港の人、サンライズ出版桂書房、さかだちブックス、虹霓社、ライツ社、ミシマ社、光村推古書院、臨川書店、ナカニシヤ出版、奢覇都館赤々舎、140B、編集工房ノア今井書店、書肆侃々房、弦書房南方新社ボーダーインク、‥‥いずれも一度は管理人が手にしたり読んだことのある地方出版社だ。きっときっともっともっと無数にある。中には姿を消したところも。出生地を離れ東京進出を果たしたところもあれば、じとっと地元に根を張り続けるところも。大手有名出版社とは無縁に、東京で奮闘する版元も沢山ある岩田書院、夏葉社、ナナロク社、フリースタイル、アルテスパブリッシング、左右社、書肆アルス、小さい書房などなど)。

もとより、小さな出版社をやりながら面白い本を出していくのは、昔も今も容易ではない。地方では東京以上にキツかろう。ソトズラはスイスイと優雅に泳いでいるようにみえるが、水面下では必死に足で水を掻き続ける水鳥のように漕がねば止まる自転車操業が必至だと推察する。けど、デジタル技術による通信・流通がこれだけ様変わりしている今、東京にこだわる必要はない。事情が許し条件が整えれば、今いる所で始めればよい。それが可能な時代が始まっている。最近はリトルプレスなんて洒落た呼び名を頂戴して、若い人たちが立ち上げる例が増えているとも聞く。頼もしい限りだ。

これから映画を作ろうとしている諸君も、地方出版の歴史とその蓄積に学べばよい。(もちろんどうぞ東京中央の大手広告代理店や地元JCなんぞの音頭取りとはできるだけ無縁に)そういえば、「東京へゆくな ふるさとを創れ」とアジってたのは雁さんだったっけ。(何?「アジる」が分からんて?)