2ペンスの希望

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短編と長編

もちろん長さの話ではない。
長編はひとつのストーリー、短編はそのストーリーのワンシーン・ワンカットという人もいる。少し違うと思う。
郷原宏さんという新聞記者出身の詩人・文芸評論家は、小説に限ってのことだがと断って、短編は「省略と抑制が利いていること、イメージ喚起力の強い文体」と言っている。う〜ん、その通りだが、映画の場合、省略と飛躍は短編・長編に限らぬ必須条件だと思っているので、まだ物足りない。
作り手としての経験と実感で言えば、受け手(観客)とのキャッチボール・往還の構造が違うとはいえる。短編映画ではワン・アイデアで突っ走り仕留めることが出来るが、長編の場合にはそうはいかない。繰り出す手数(てかず)が必要で、手法も複雑になる。使う筋肉も呼吸法も異なる。瞬発力と持続力、短距離走とマラソンの違いもある。 或いは ワンパンチノックアウトとフルラウンド判定の戦いとでもいおうか。
キイワードを挙げれば、強いストーリー、魅力的なキャラクター、堅牢且つしなやかな「骨格」、‥‥あたりか。
長編映画のことを英語でfeature film(feature picture) という。feature とは、呼び物の、主要品という意味だそうだ。周到な準備、それなりの仕掛け、工夫が不可欠ということだろう。ワンアイデアを水増ししたようなのは駄目。メインイベントが時間稼ぎの無気力試合ではブーイングも必至、失格だろう。今の映画館に、メインイベントの名に値するカードはどれ程あるのだろうか。
結構(ケッコー)=(名詞)全体の構造や組み立て が 整っていなければ、
結構(ッコー)=(形容動詞)十分満足 とはとても云えない。