2ペンスの希望

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バルタン星人

バルタン星人命名の由来には諸説あるようだが、スタッフが、当時流行っていたフレンチポップスの歌手=シルヴィ・バルタンのファンでそれにちなんで名付けたという説が気に入っていた。
映画はあるもので作る。近くにあるものは何でも利用する。怪獣の名前を考えた時好きな歌手の名前を持ってくることは不思議ではない。ありそうな話だ。
そのバルタン星人が、命名から半世紀を経た東京でシルヴィ・バルタンと対面した、という話を若い友人から教えてもらった。
東京ビルボードでの来日公演にサプライズゲストとして登場したらしい。バルタン星人が「“あなたのとりこ”だ」と伝えるとシルヴィは「こんな家族がいるなんて知らなかったわ」と返して会場を沸かせたようだ。さぞ盛り上がったことだろう。思いついた人は小さくガッツポーズを作ったかもしれない。
けど、どこか蓮っ葉な印象も持った。あざとさも透けてくる。
ワン・アイデア、一発ギャグの類を必要以上にもて囃すのはもう止めにしないか。バルタン星人がこれほど知られるようになったのは、最初の思いつきから丁寧に磨き上げ育ててきたスタッフの賜物だ。映画は思いつきから始まるかもしれないが、それでも思いつきだけでは映画は出来ない。手塩にかけながら大切に育んでいくものだ
作り手は種蒔く人、つまりは農夫か職人、あるいは子育てする親だ。
成果だけをいただき、気の利いた(ふうな)思いつきで商品化して商売するのは、広告宣伝屋さん・アイデアマンにでも任せておけばいい。
えっ、バルタン星人は知ってるけど、シルヴィ・バルタンなんか知らないって。そうだよね。そんな時代なんだよね。YouTube でも挙げておこう。