2ペンスの希望

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型枠大工

小田嶋隆さんの「コラム道」という本を読み終えた。【ミシマ社2012年5月21日刊】
途中から無残に失速し迷走するが、幾つか面白い比喩・用語法に出会った。
そのひとつ。「全世界は作品にならない」確かにその通り。人生360度全部を映画にするなんて出来ない相談だろう。とするなら「型」と「枠」が必定。表現(化)とは、「(ある限定の中で)何かを言い切る仕事」と小田嶋さんは言う。さらにコラムニストは『型枠大工』だと‥。言いえて妙。どういう「型」と「枠」で世界を切り取るか。
大工さんにもいろいろある。宮大工から数奇屋大工、町屋大工、‥、船大工や家具大工なんてのも‥。どれがエライというわけではなかろう。宮大工にも口ばっかり達者で腕三流の半ちく野郎もいる。型枠大工にも名人上手がいる。なのに、宮大工の方が立派で、型枠大工は貶められる。冗談じゃない。上下じゃなくて横並び。これがなかなか判って貰えないから厄介だ。コケオドシで中身スカスカのハリボテ宮大工より、見えないところで見事な仕事をやってのけながら、涼しい顔の「型枠大工」にこそ憧れる。
この歳になってさらに。