2ペンスの希望

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併映の一本

またぞろ懲りずにいそいそと三本立映画館に出掛けてきた。
お目当ては若手の中国映画。悪くはなかったが、東京の名だたる監督さんがこぞって誉めたてる程のことではなかった。 めっけものだったのは併映のハリウッド映画。
併映でなければ多分手を出さなかった一本だ。スポーツ業界舞台裏の内幕モノ。職場の周りは敵だらけ、頑迷なワンマンオーナー、あこぎな交渉相手とのタフな駆け引き、窮地に追い詰められる主人公、背景には、母との確執、父と息子の物語、恋人の妊娠等など、単純にして複雑、複雑にして単純。ハリウッド映画お決まりのパターンだ。それでも最後まで目を離さずに観た。ラスト10分のどんでん返しクライマックスもお約束以上ではないのだが、重くないハッピーエンドの後味は爽やかだった。
思わせぶりで舌足らずな生煮え映画よりはずっとましだった。(必ずしも、くだんのお目当て中国映画のことではない‥‥為念)
冒頭に、映画を楽しむための「3つのポイント」という日本語字幕解説が入る。アメリカの業界事情を知らないであろう日本の観客にも映画を楽しんでもらおうという親切設計。
何度も出て来る電話による会話シーンでは、定番の画面分割が頻出するのだが、その画面構成が凝っていた。画面分割線そのものが揺れ動くとともに、前景の登場人物たちが分割線を食み出して越境する。時には、主人公が通話相手の前を丸々横切ったりもする。まるでマンガのキャラクターがコマ割りを無視して自由に動き回るように‥。この多層画面分割によって、遠く離れた人物たちが目の前で丁々発止やり取りしているような臨場感が演出される。こうした演出のディテールにも、観客を惹きつける為の工夫が凝らされる。楽しんでもらうためには何でもする、最大限の工夫を施す手間暇と計算。
侮るなかれ、ハリウッド映画。なのに興行的には振るわなかったようだ。残念。
それにしても、たまたま出合った映画が良く出来ていると、嬉しい。