2ペンスの希望

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一本のクギ

「幻の映画デビュー作『母』DVD付き」という謳い文句に惹かれて『高峰秀子体新書』【PHP研究所2015年2月5日 刊】を読んだ。DVD映画は大したものではなかった。  6歳の高峰秀子は愛らしかったが‥。
ただ、高峰の語り部(伝道師というべきか)斎藤明美さんの文章が読ませる。
東宝移籍後第一作『良人の貞操』で初めて山本(嘉次郎)監督と仕事をした時、
高峰は思う。
「監督も脚本家も、小道具さんも結髪さんも‥‥‥皆、平等に一本のクギなのだ。映画という一つの楼閣を建てるための、一人一人が大切なクギなのだ。私も皆に恥じない一本のクギになりたい」
この時、高峰は十三歳だった。
決して好きではなかった女優業を仕事として全うしたプロ根性・その姿勢のゆるぎなさに魅かれる。別の箇所にはこんな言葉もあった。
「役者は自分の中にないものは表現できない」