2ペンスの希望

映画言論活動中です

徒歩圏に九館

 

f:id:kobe-yama:20210107212402j:plain

思えば、子供の頃には歩いて行けるところに九軒の映画館があった。大阪南部の下町。邦画五社の系列館、活劇専門の洋画館、ラブストーリー・スリラー・ミュージカルごった煮の洋画二番館、何でもござれの選り取り見取り。二本立て三本立て四本立ても珍しくなかった。無論 入れ替えなし、何本見ても何時間居てもOK。

父親と伯父さんがやっていた仕事場の囲い塀に映画館ポスター掲示枠がいくつも並んでいた。街角の広告宣伝メディアだ。週替わりでポスター貼り替えのオジサンが廻ってきて、ポスター掲示と引き換えに「ビラ下券」を何枚もくれた。無料の招待券。家にテレビがやってきて皆が夢中になり始めると「ビラ下券」は余り始めた。もっぱら一人でせっせと消化した。毎晩の如く足を運んだ。休みの日には朝から出かけて一日中居た。近所だけでなく、十代半ばからは盛り場の映画館をはしごするようになった。もちろんVHSもDVDも無かった。タウン誌も情報誌も無かった。今は昔、プガジャもぴあも 今は昔 夢まぼろし