2ペンスの希望

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四十番館 映画巡回員

岡田秀則さんが或るフリーペーパーで書いていた。映画はその昔、一本のフィルムを封切りロードショーから順に使いまわしして上映してきた。そのことを書いた部分。「都会の封切館で上映された後は、二番館、三番館へ流れ、最後は、ときに四十番館を超えることもあったという。後のなればなるほど待たされるし、フィルム自体も傷むけれど、その分入場料は安い。」‥「四十番館」まであったというのは初めて知った。無数に傷が入って雨降りのようなフィルムを思い出す。

もうひとつ。国鉄時代の話。

1958年の「旅客及び荷物運送規則」によれば、巡回映画員が携行する映写機とフィルムは、巡回医療のレントゲン機や競輪選手の自転車と並んで、大きくても別料金を払えば列車にのせてよかった。」とあった。【「旅客及び荷物運送規則」第9章 手回り品 第309条 有料手回り品及び手回り品料金 】

巡回映画員、町から町へ、海辺の浜から農村へ、小学校の校庭から公民館の講堂へ、フィルムを携えて全国を行脚した巡回映画は当たり前の風景だった。今は昔、夢まぼろし

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附録:

当時のフィルムは可燃性のセルロイド製だった。よって 上記国鉄1958年「旅客及び荷物運送規則」の附則 別表第2号にはご丁寧な記述がある

(3) 実重量が300グラムをこえる映画用フイルムで、次により荷造したもの。

イ フアイバー等の不燃性気絶縁物質性容器に収納し、振動衝撃等によりふたが開くことのないように荷造したもの。
ロ フイルム容器に入れ、且つ、帆布製の袋(JES繊維3,101の上綿布8号若しくは並綿8号又はこれらと同等以上の厚さ及び強度を有する帆布を使用したもので、二重底とし、上ぶた布又は中ぶた布をつけたもので、且つ、金属製品を使用しないものに限る。)に入れたもの。
ハ フイルム容器に入れ、且つ、直径約9ミリメートルのわらなわ又はこれと同等以上の強度を有する綱等で中ゆわきをし、次の規格による用紙で包装したうえ、中ゆわきと同等以上の強度を有する綱3本を十文字にかけ、2箇所の胴じめをし、手さげをつけたもの。但し、自動車線区間を除く。
(イ) 強度
クラフト紙70斤以上のものを2枚貼り合せ、且つ、しわよせしたもので、縦、横いずれの方向に対しても6kg/cmの抗張力を有するもの。
(ロ) 防火性
マツチ1本で点火した場合、着火しない程度の防火剤を塗布したもの。
(ハ) 包装用紙の証明
包装用紙の表に、製作者が(イ)及び(ロ)に規定する規格に基いて製作したものであることを表示する「映画用フイルム包装用紙国鉄規格品」の字句及び製作者名が印刷してあるもの。 
この包装用紙が不適格であつたため、運送中自他に損害を及ぼす事故が発生したときは、その荷送人がすべての責任を負うものとする。
微に入り細にわたる懇切丁寧 具体的な記述文言は、映画のための便宜であり、同時に、国鉄の責任逃れでもあったのだろう。時代は変わった!時代は変わらない?