2ペンスの希望

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今昔三 大部屋

昔は大部屋だった。役者の話ではない。地方の宿泊ロケに出かけて時の宿のことだ。
スタッフの下っ端ペーペーは大部屋で寝起きした。PR映画や記録映画の小編成スタッフの場合はなおさらだった。監督も撮影助手も一緒に寝た。メシも風呂も一緒。酒席で先輩の話を聞くのも仕事のうちだった。愉しくもあり、苦痛でもあった。早く抜け出して明日の段取り、準備をしたいのを我慢しながら、最後まで付き合った。誰のいびきが大きくて、誰の歯軋りが凄いか、みんな知っていた。経費きり詰めという現実的な事情もあったろうが、個室のあるホテルなんぞには泊まらなかった。それが何時ごろからか、ビジネスホテルとなり個室に変わった。一人一部屋。食堂で夕食を済ませるとそそくさと個室に引き上げる。あとは自由時間。公私のけじめと言えばその通りだが、薄味になった。今は昔、全身的に映画にまみれていた記憶が懐かしい。