2ペンスの希望

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グローブ

かなり以前だが、カメラは銃である、と書いた。今日は別の話。
探検家で写真家の石川直樹さんがラジオでこう話しているのを聞いた。
カメラをグローブのように使いたい。何かを狙い撮りするのではなく、向こうからやってくるものを丸ごと受けとめたい」そんな趣旨の発言だった。
これまでは、狙い定めて一瞬のシャッターチャンスをものにする狩猟道具、それがグローブに変わる受身の姿勢が新鮮だった。
ご存知のように、映画の世界ではカメラを廻すことを「シュート:shoot」という。一場面一カットは「ショット:shot」。いずれも、撃つ・射る・発射・発砲・射撃・狙撃を意味する言葉である。サッカーで「シュート」といえば、ゴールめがけて蹴り込むことだ。
それを石川さんは、「グローブ:glove」手袋・グラブ・グローブだと言う。
単なる言葉の言い換え、ともに、相手を掴むということでは同じじゃあないか、という勿(なか)れ。銃とグローブでは正反対だろう。
攻撃ではなく受身。「他から働きかけられるだけで、こちらからは積極的に出ない、消極的な態度」と否定的なニュアンスで語られることもある。柔道では、「投げられたり倒されたりしたとき、けがをしないように腕で床を打ったりして衝撃をやわらげて倒れる方法」を意味する受身。受けとめるためのグローブ。自らを包むとともに相手をも包み込むためのカメラ。
何かを作る力 前のめりで何かを見てとる力より、受け止める力 感じ取る力の方が大切だと言われているような気がした。
もう少し考えてみたい。