2ペンスの希望

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自己慰安

映画を作る人の中には、「みんなのために作っている」とか「社会のために作っている」と言う人がいる。嘘をついてはいけない。すべての表現は、第一に自分のため・わたしのために作る。(吉本隆明さんの言葉を借りるなら「自己慰安」=自分にだけ通ずる慰みということになろうか)そして第二に(第一とほぼ同時的に)あなたのため・身近な大切な人のために作る(受託仕事の場合はあなた=クライアントということにもなろうか)。経験に則して言えばそうなる。
きたやまおさむさんもこう書いている。(きたやまさんについて知らない人は勝手に調べて下さいな)
「みんなのためにつくってしまう歌を私的世界以前に最優先してしまうと肥大する虚の世界に没入して疎外感が生まれる」【『帰れないヨッパライたちへ 生きるための深層心理学NHK出版新書384 2012年7月刊】この本、「嫉妬」と「三角関係」をキイワードに「ぽっと出」の「成り上がり」が「嫌悪される恐怖」と「嫉妬してしまう不安」を率直に語っていて面白かった。
公言するかどうかは別に、すべての表現は自分と身近な人のために作られているのだ。このことは知っておいたほうがいい。