2ペンスの希望

映画言論活動中です

しっくりいくまで

短く明快な言葉は疑ってかかったほうがイイ、そう思ってやってきた。紋切り型・常套句・定型句は明快で強い。けど、一度は眉に唾してみることだ。そんなに単純でいいのかい、と。

哲学者 古田徹也は、ナチスに抗して雑誌『炬火』を発行し続けたオーストリアのジャーナリスト作家 カール・クラウスに寄せて、こう書いている。

f:id:kobe-yama:20211029064352j:plain

《言語は十分に迷う者に対して好く報いるものだ》 しっくりこないという違和感を頼りに〈言葉の場〉を探索していく先で、しっくりくる言葉が本当に訪れてくれるかどうかは定かではない。ただ、これは実際のところ、手堅い賭けである。韻律や暗喩等のテクニック、あるいは詩人の天賦の才といったものは必ずしも必要ない。自然言語は、凡人の手探りの探索に応えられるだけの豊かな語彙や、創造性・柔軟性を湛えている。」古田徹也『言葉の魂の哲学』【2018.04.10 講談社選書メチエ

「言葉・言語」⇒「映画」と置き換えて読み直してもらいたい。

「しっくりくる」表現を求めて、「迷う」こと「ためらいつづける」ことがダイナミズムを生む。手放して安易安直な紋切り型のお約束に逃げてはいけない。コレ 表現の要諦のひとつとして覚えておいて損はない。